短編
□脳天気
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蝕の真っ只中、戦闘には不向きな文字の使い手なオレはミノとノアと一緒にいた筈だったのだが。
「いない…」
はぐれたようだ。
こういうときにひとり野放しは結構クる、精神的に。
誰かいないか、とさ迷っていると、
「あ、日向くんだ」
脳天気な声が鼓膜を揺らした。もう何度も聞いた声だ。
「日向くんと会えるなんてツいてるなー」
駆け寄ってきた六道はにやけ面でオレの隣を歩く。
「バカかお前。そんなこと言ってる場合じゃねーだろ」
「大丈夫だよ。オレ神だし」
「…本当脳天気だよなお前」
「だって、嬉しいんだもん」
(こいつ完全に楽しんでやがる…)
今にもスキップし出しそうな六道を余所目に、刻限を確認する。もう終盤に差し掛かった頃だろう。だいぶ和らいできた蝕の攻撃。
なんやかんやで、六道に助けられてしまったようで、何だか腹立たしい。
「ねえ、日向くん」
「何だよ」
視線が合った瞬間、唇が合わさっていた。
そして六道が囁いた。
「こういうときにするキスって、なんか燃えない?」
―――――
キスの日記念。滑り込みですね。
戦場でのキスって妙に惹かれますよね。某糸色先生でも言ってた。