OTHER

□伝えたい。
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「静雄、おはよう」


太陽よりも明るく輝やく笑みを浮かべて此方へ向かってくる新羅。


俺は「おぅ」とだけ返し、新羅の一方的な話を聞く作業に移った。



俺より少し低い肩が腕にあたる。

それだけで緊張してしまう程に、俺はこいつが好きになっていた。




―――――


授業が終わるのが待ち遠しい。


早く昼休みになって、新羅の声や顔を近くで堪能しながら昼食をとりたい。



時計を見れば、まだ授業開始から10分。




つまらない国語教師の授業を聞き流しながら、俺は教室の窓から覗く空を見てボーっとする。



気がついた時には、もう授業が終わっていて、新羅が俺の顔をのぞき込んでいた。


「な、なんだよ…」


「やっと気づいた。ボーっとしていたから、どうしたのかと思ってね」


「すまん…」


きっと今の俺の顔は、赤いだろう。


俺は逃げるように、「飯食いに行こうぜ」と言ってそそくさと教室を出た。


新羅が俺の名前を呼びながら追いかけてくるが、今、それを気にしている余裕などない。



とにかく、顔を隠したい。


―――――


家へ向かう帰路。


新羅と2人並び、下校。

内心嬉しくて仕方ないのだが、そんなこと言えるわけない。



新羅の可愛らしい横顔を見ながら、いつもと同じ道を歩く。



「今日はいい天気だよね。これから梅雨入りするなんて嘘みたいだよ」


「そうだな」


「雨のにおいって、少し落ち着くと思わないかい?」


「あぁ」


素っ気ない返事しか出来ない俺。

それなのに図々しいかもしれないが、気づいて欲しいんだ。




俺の、お前への思いを。




(好きだなんて言えるわけない)

 

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