tox2

□クランスピア社
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「もしかして、リドウの悪徳商法に引っかかって多額の借金を負う事になったカモってあなた?」

駅から出ると背後から女性が話しかけてきた。
ルドガーを見る目が皆冷たい。
借金をしたというだけなのに、騙されただけだというのに皆が犯罪者でも見る様な目をしている。

「クランさん!」

この人もジュードの知り合いのようだった。
ラ・シュガル王の側近を務めているらしい。
かっちりとしたスーツを着こなし、髪もすっきりと纏めている。

「こんなところで会うなんて奇遇ね。
リドウがいいカモを見つけたと言っていて、駅であなた達を見掛けたから」

「リドウさんを知ってるんですか?」

「腐れ縁みたいなものよ。
移動制限で困ってるってところかしら?」

ルドガーが頷くと、クランはまじまじとルドガーに顔を寄せて見つめた。
同情の色がはっきりと表れている。

「分かるわぁ。私も借金しててね。
移動制限はないんだけど」

「クランさんも借金を?」

「ええー。もう何を考えてんのかしらね」

肩をすくめてやれやれと溜息をつき、思い出したように微笑んだ。
いい仕事があるのだけれど、と。

「これでも顔は広くてね。
仕事、斡旋してあげるわ」

「いいんですか?」

「いいのよ。借金ってほんっとに大変だから。
エラール街道で魔物退治の依頼が数件あるって話なのよね。
受けてみる?」

ルドガーはジュードと顔を見合わせ、こくりと頷いた。
クランから口頭で説明があり、グッドラックと言って手を振られる。

「ジュードの知り合いもおひとよしなのね」

「あはは……」

クランをちらりを振り返り、ジュードは複雑そうな顔をした。
とても綺麗な女性で、王の側近というからには頭もいいのだろう。

「どうしたの?」

「ううん。何でもないよ」

取り繕うように笑みを浮かべ、ジュードは先を歩く。
リベルの話題が出るとあんな顔をするけど、一体どうしたというのだろう。



「っと、これで終わりかな」

「そうだね。疲れてない?」

ルドガーとジュードが魔物退治をし終え、報酬を貰って振り込む。
これでトリグラフまで行けるようになったようだ。

「ルーメン、すっかりルルと仲良くなったね」

「そういえばあの源霊匣……。
ちょっと見せてもらっていいかな?」

「……ジュードにならいいよ」

「ありがとう」

少し躊躇ったものの、箱型の源霊匣を渡す。
源霊匣をあちこち見て、ジュードは驚いたように目を丸くした。

「こんな風になってるんだ……。
すごいよ。僕らでもここまでは研究が進んでない。
それに、増霊極も搭載されてる」

「私専用の特別源霊匣なんだって。
父様がくれたの。
何かあった時には精霊術で悪い人を撃退しなさいって」

「セルリのお父さんってすごい人、なのかな?
一度会って話が出来ればと思うんだけど……」

「……もう、いいよね。
早くトリグラフに行きましょ」

ルーメンとルルが仲良く歩いている。
ルルの太めの尻尾がゆらゆら揺れていた。


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