tox2

□雪とタイムカプセル
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皆が集まって報告をし合うが、二人に関する有力な手掛かりは見つけられなかったそうだ。
もしかしたらユリウスの力で分史世界に入ったのかもしれない。
そんな事を話していた矢先、ラコルム海停への移動許可が下りた。
真面目にこつこつ返済してきたおかげで信用が高まっているらしい。

「パパも結婚はマジメな人じゃないと許さないって言ってた」

「真面目なだけのいい人もつまらないけどね」

「どうでもいい人なんだよね」

そんなノヴァとエルの会話を聞きつけ、アルヴィンがジュードを小突く。
からかうようなアルヴィンの目にジュードは僅かに顔を赤くした。

「だってさ」

「僕だって、誰にでもいい人じゃないから」

「お、言うようになったね〜。
でも、最初の印象って中々変わらないもんなんだよ。
ここはばっちり、あなたは特別ですってな扱いしとかないと」

「してる、つもりだけど……」

「鈍感も罪だよな」

哀愁漂うジュードの肩をぽんぽんと叩く。
もう襲っちまえという助言に出来るわけないでしょと更に顔を真っ赤にして叫んでいる。
人の恋路は見ていて面白いものだ。

「借金、手伝ってやるよ。
する事もないしさ」

「助かるよ」

「借金もいいけど、私のスープも手伝いなさいよ。
それに、いい情報を手に入れたし」

ミラによれば、カン・バルクまで行くといい材料が手に入るそうだ。
ジュードも二人が行くならと一緒に行くと言い、他の皆はそれぞれ用事があるからと別れた。
ラコルム海停からシャン・ドゥを目指し、更に北に進むとカン・バルクだ。

「一年前も、こうやって船に乗ったんだっけな」

「追手とかはいなかったんですか?」

「いたけど、アグリアが迎えに来てくれてさ。
プレザも誘って。
だから、結構あっさりカン・バルクまで行けたよ」

「アグリアとは幼馴染なんですか?」

「そんなとこ」

「その、結婚の約束とかは……」

「いや、してないけど」

まさか、こっちのリベルはアグリアとしていたんだろうか。
一年前に皆死んだらしいけど……
一旦目を閉じて、それから隣で海を見ているジュードの顔を盗み見る。
自分の知るジュードの面影は残っていたものの、顔つきがまるで違う。

「あの時はなよなよしてたけど、今はしっかり意思を持ってるみたいだな」

「今は、自分のなすべき事を見つけましたから」

「そっか。そうだ、じゃあ敬語いらないよ。
もう身分もへったくれもないし」

「じゃあ、これから普通に話すよ」

「そうしてくれると嬉しい」

まるで自分だけが置いて行かれたよう。
これも捨てる事を選択した自分への罰なのだろうか。
この世界のリベル。あんたなら、俺にどんな言葉をかけるんだろうな。
運命を切り開け、とかよく分かんないし。

「ジュード、ここにいたの」

「セルリ。あ、前約束した、雪うさぎ一緒に作ろうか」

「うん。オルンもミラも一緒に」

「いいよ」

エルとセルリは迷子、のようなものらしい。
エルはルドガーにべったりで、セルリは比較的ジュードの傍にいる事が多い。
獣隷術を使えるとはいえ、ルーメンの言葉までは分からなかった。
源霊匣。興味もあるけど、研究してる場合でもない。

「ジュード」

「何?」

「ミラの事だけは、守ってやってくれ。
強がりが得意な女だから」

「うん」

到着を知らせる汽笛が夕焼け空に響いた。


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