05/10の日記
01:39
頭を撫でて・2
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情けなくて、
先生の言葉を、教えを、守れない自分が情けなくて……
涙が出そう。
泣きそうな気分で俯くと、ふと、風を感じた。
一筋の風が、髪をすく。
さらさら、さらさら……
気持ちいい……
「先生」
顔を上げると同時に、視界が開けた。
まず、視界に入ったものは、ぎこちなく固まっている手のひらだった。
視線を上に移すと、そこには見知った顔があった。
「先、生……?」
「……」
「先生、どうしたんですか?」
「あ、いや、どうしたって……もう、下校時刻だ。早く帰りなさい」
こんなところで寝るな、風邪をひいたらどうする。と、先生が私を叱る。
そうか、勉強していて……頭が痛くなって、そのまま寝てしまったのか。
気がつくと、頭痛は治まっていた。
暗い教室。
当たり前のように、残っている生徒は私だけだった。
教室にのびる影は、私と、先生のもの。
「あれ、窓……」
「窓?」
「閉まっていましたか?」
「あぁ……戸締まりは完璧だ。だから、暗くなる前に早く帰りなさい」
「……はい」
そんなに追い立てなくたって……
少し、不服そうに先生を見上げると、優しい微笑を返された。
女子達が騒ぐこの笑顔……私は少し苦手だ。
だって、絶対
この笑顔には、逆らえないのだ。
「……ふぅ」
「橘、これ見よがしに溜息をつくな」
「はい、すみませんでした」
「お前……吃驚するくらい棒読みだな……」
仕方なしに、机の上を片付けて、鞄に仕舞う。
先生は、それを黙って見ていた。
私を起こしたのなら、他の見回りに行ってもいいだろうに、先生はそうしない。
此処が最後だったのだろうか。
「先生、さようなら」
「あぁ、気をつけて帰れよ」
「はい」
席を立ち、教室を出ようと扉に手をかける。
教室を出る前に、もう一度、先生に会釈をした。
「橘」
「……はい?」
「大丈夫か?」
「何が、ですか?」
「……顔色が、よくない」
「……頭が、痛かったのですが……大分、楽になりました。大丈夫です」
「そうか」
「……先生」
「なんだ?」
「前に、『自由の精神をもって』って話、しましたよね?」
「……進路ガイダンスの時、か?」
自由の精神をもって、やりたいことをやりなさい。
決して、後悔をしないように……
「私が、先生の教えを、きちんと守れたら……
もう一度、撫でて下さい。頭」
「……!!た、橘……お前……」
「眠っていましたよ、本当に」
言いながら、にこりと微笑むと、先生は困ったように苦笑した。
窓が、開いていなかったから……
私の髪をすく、優しい風は、先生の手だと、思ったので……
指が長くて、綺麗な、先生の手。
ねぇ、先生
約束ですよ?
Fin.
今日は、鈴木先生の日でした。
長谷川博己かわいいなぁ。
わたしより十も年上だけど。でも、かわいい♪
「先生」は、下校時刻を過ぎた教室を見回りしていて、橘さんが机にうつぶせで寝ていてるのを見つけて、起こそうとしたら、目にうっすら涙を浮かべながら『先生』と呟かれて、思わず頭をなでなでしてしまった次第です。
しかも、突然、橘さんが覚醒して、ドギマギしていたら、最終的に鎌をかけられちゃう(笑)
かわいそうな人なのでした。
鈴木先生的な、生徒に振り回されるかわいそうな人、大好き(笑)
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