08/29の日記

01:34
神様と光・1
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・本棚(Main)に置いてある「小さな音楽会」の番外編
・絳攸と黎深さまの出会い(絳攸の年齢は、原作の出会いと同じ10歳)





『神様と光(かみさまとひかり)』





太陽の光を透かして、色とりどりの明かりを作るステンドグラス。

それらの明かりを受けて、静かにたたずむ一台のピアノ。
古いピアノ……

それは、小さな教会のある情景。





「シスター!シスター!」

ある人を探し、廊下を走る。
その先をゆっくりと歩いていたシスターを見つけ、絳攸は声を上げた。

「絳攸、廊下で走ってはいけません」

声をかけた瞬間、ピシッとした声で叱られる。
思わず、急いでいた足がピタリと止まった。

「ごめんなさい、シスター」

「はい、気を付けてね」

素直に謝ると、シスターは柔らかい笑顔を返してくれた。

ここは、身寄りのない子供たちを受け入れている施設、言わば孤児院だ。
この施設は、敷地のなかに小さな教会が建っている。

「シスター、院長先生は?探しているんだ」

「院長先生なら、院長室にいるわ。でも、お客さまが来ているから、後にしてね」

「お客さま?」

「えぇ、この施設に寄付をしてくれる人よ。お会いしたら挨拶をしてね」

「後にして」と言われては仕方なく、絳攸はゆっくりと来た道を戻った。

「院長先生に、ピアノのこと早く言いたいのに……」

今朝から、ピアノの音が変なのだ。
高いファの音と、ソの音がいつもと少しだけ違う。
他のシスターに言っても、「そうかしら?」と首を傾げるばかりだから、院長先生に聞いてもらいたかった。

絳攸に、ピアノを教えてくれた院長先生に……。

外に出ると、分厚い雲が空を覆っていた。
さっきまで晴天だった空は、今にも雨を降らしそうだ。
遠くで、雷が鳴った。





続きます。
おそらく、4,5ページになる予定。
ステンドグラスを通して輝く光のように、キレイなお話に出来たらいいなと思っています。

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