ミエナイキズナ
□第三章 弱きものには制裁を
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「えぇ、どうぞ。」
中から襖を開け、二人を部屋へと入れた。笑いながら「大丈夫?」と声をかけてくれる。
「茜梨、だいぶ疲れているように見えるぜ。あんた頑張りすぎ。」
「ほら差し入れ。ぎりぎり余ってた米使ってさ、握ってきたんだ。俺らあんまりこういうことしねぇから、まぁ形は汚ぇけどな。」
「こっちのが俺が握ったの、んでもう一個がこいつの。俺の方が形いいだろ?」
「ばっかお前…これは俺がやったんだっての!!!」
私の前に二つのおにぎりが置かれた。律さんが作るのと比べれば、形は確かにひどい。それでも、私のために作ってきてくれたんだと思えば嬉しかった。
「お二人ともありがとうございます!!えっと…じゃぁいただきます。」
本音を言わせてもらえば、塩加減がいまひとつな握り飯だ。でも今はそんなことどうでもよかった。ただただ嬉しかった。私に対する優しさだけが身にしみて、少しでも気を緩めると泣いてしまいそうだった。
「なーんか嬉しそうに食べてくれるよね、茜梨。」
「はい、さっきまでなんか元気出なかったんで…このおにぎりに元気が詰まってたみたいで!!」
「よーかったぁ…激マズだったらどうしようかと思ったもんな。」
私は楽しく会話しながら、二つのおにぎりを食べていた。
少し、この二人の門弟さんに助けられたような気がした。
しばらくして…
「んじゃ、俺らはそろそろお暇しようかな。」
そう言って座敷から立ち上がる門弟さんに、再度お礼を言う。
「今日は本当にありがとうございました。」
「あーいいって!こっちも元気になってもらえてよかったよ。そうだ茜梨、なんなら俺ら稽古付き合ってやろうか?」
「えっ!?」
いきなり持ちかけられた提案に、驚いてしまった。
「そんな…気使わなくていいですよ!!もう十分…」
「なーに言ってんだよ。調子もちったぁ戻ってみたいだし。遠慮だったらいらねぇから、な?」
「そ、そうですかぁ…?」
これ以上みんなに遅れをとるわけにはいかない…こう言ってくれてるし、もう少し頑張ってみようかな。
「わかりました、やります。お願いします!!」
「そうこなきゃな!!」
「じゃぁどうしようか?修練場使ってるから…ちょっと場所離れて裏口付近の森みたいなとこで待ってるわ。準備出来たら来いよ。」
「じゃな茜梨、また後で。」
そう言って、二人は歩いていった。
この稽古で少しは剣術、上手くなれるだろうか…
私は臨時稽古に行く準備に取り掛かった。