ミエナイキズナ

□第三章 弱きものには制裁を
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休憩の割には結構時間をとってしまった。そして、あまり休めなかった気がする。

あの出来事の後だからか、なんとなく前半のような調子は出ない。やっぱり私は落ち込んでいるのだろうか…朋弥くんにはあぁ言ったけど、他の人に嫌われているかもなんてそこまで思っていなかった。

犀彰さんは「さっき頑張りすぎたんだろう。今日はこのくらいにしとけ。」と、また休むように促す。

ただでさえ足手まといな私が、調子も出ないままいてもしょうがない。そう思い、仕方なく自室に戻ることにした。



はぁ…

自室の襖を閉め終え、私はため息を漏らした。

「少し、落ち着いた方がいいよね…」

そうは思うものの、一人でいると初めて感じた胸が凍りつくような"恐怖"という感情が、思い出されてならなかった。

忘れようと、何分ほど頑張っただろうか?

いっそのこと寝てやろうかと布団を敷きかけたそのとき…部屋の外で私を呼ぶ声がした。

「茜梨ー!!いるー?」

「はっ、はーい!!何ですか?」

ここから見える影からして二人の門弟さんだろう。この道場には律さんとお雪ちゃんと私しか女性はいないため、この門弟さんたちは当然男の人だ。

正直今はあまり構ってほしくない気分だったが、あっちに行けとも言えないので返事をした。

「いや…稽古でだいぶ疲れてるみたいだったから、差し入れ持ってきたんだけど…入ってもいいかな?」

こんな私に気を使ってくれる人もいるんだ。そう思うと、少し気が軽くなる。
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