ミエナイキズナ
□遠い約束の果て
1ページ/3ページ
私が落ち着いてからしばらくして、兄ちゃんが沈黙を破る。
「茜梨…俺と旅しないか?」
「たび…?」
「そう。道場っていう狭い世界にずっといたんじゃ面白くないだろ?これからこの世界の美しいところも綺麗なものも…いろんなものを見に行こう。ま、俺と一緒ってのが嫌じゃなければな。」
「……」
やっと会えた兄ちゃんと行きたい、もっと一緒にいたい。でも、今まで傍で私を支えてくれた朋弥くんと離れるのかと思うと、とても寂しくなった。道場に残りたい。
二つの矛盾する思いを抱く私の背中を押してくれたのは、今の今まで静かに見守っていてくれた朋弥くんだった。
「いーじゃん、柚葵くんと行って来いよ。」
「だ…だって…」
「よくわかってるよ。お前のことだから、柚葵くんと行きたいけど、道場出て行ったら俺に申し訳ないとか思ってんだろ?」
少し笑いながらそういう朋弥くんは、私を兄ちゃんのところに押した。
「遠慮とかすんなって。折角兄妹会えたんだ…時間をかけてゆっくり話すことも必要だよ。俺はさっきお前を護れなかった、でも柚葵くんなら安心だろ?」
「朋弥…お前…」
「柚葵くんまで…全く困るなぁ。茜梨のこと護ってあげてよ。」
いつだって私の気持ちをわかってくれた朋弥くん。離れるのは寂しい…でも今回は、兄ちゃんについて行こうと思う。きっとまた、いやいつか必ず会える。そのときまでの、ほんの少しの間だけの辛抱だと、私は自分に言い聞かせた。
「朋弥くん…ありがとう!!」
この場所で3人が笑えていられること、この先もずっとこんな関係でいられますように…