本棚▼デュラララ!!

□死ぬほど愛してる【シズイザ】
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昼の12時少し前。いつものように寝坊癖のある静雄はいつまでも布団の中でくるまっていた…はずなのだが。

「…(さみぃ)」

背筋を凍らせる冷気。季節は真冬と大変厳しい寒さの中だったのだが静雄は性懲りもなくスウェットと薄着で寝ていたのである。しかも腹を出して。

「…つか布団…」

重たい腰と凍りついた足と手を精一杯に動かして上半身を起こす静雄。目をこすり辺りを見回すと布団の固まりがとなりにあった。静雄はどうして布団がそんなところにあるのか分からなかったがとりあえず寒かったので手にとってみる。

「…?」

静雄は布団にしてはとても感じない重さを感じる。いや、羽毛布団だから片手で持ち上げるには結構な重さを感じるわけだが、今回はそれの倍は重さを感じた。

「…」

布団を思いっきり引き上げると、ごろんっと落ちる「物体」
何だ?と目をもう一度こすると、そこには見慣れた黒い髪と細っこいからだの持ち主が寒そうに丸まっていた。まるでネコのように。静雄の隣で。

「…」
「んっー…さむぃ〜」

布団を探す腕を静雄が掴むと、それを伝って静雄の身体に抱きついてくる美青年。
その瞬間、静雄の頭の中で何かが切れる。

「…ブチッ」
「…え?」

その音で完全に開眼した彼は自分が今どういうこうどうをしているのか再確認をすると、むくりと起き上がってにこやかに挨拶を交わした。

「…お、おはよう。シズちゃん」
「イーザーヤァアアアアア!!!」

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俺は平和島静雄。いたって平和な家庭に生まれた大学3年生だ。
だが、そんな平和も2年前「奴」が来たことによってぶっ壊された。その「奴」が今俺の目の前で倒れている。(俺に殴られて)

「し、シズちゃん…俺一般人なんだから、もうちょっと手加減ってものを…」
「テメェが性懲りもなく毎回毎回俺の布団にもぐりこんでくるから悪ぃんだろ」

眉目秀麗を具現化したような顔つきのこいつは折原臨也といって、俺の5つ下の高校2年生だ。
その折腹臨也というのが俺の家に来て平和な日常を壊したのが丁度2年前の春。こいつの両親が不運な事故によって死んでしまい、親戚すら行く当てがなくなったこいつを俺の父さんが臨也と知り合いだったらしく居候させてやることにしたらしい。
第一印象は「可愛い」だった。正直女かと思ったくらい睫毛も長く、手足も綺麗だったしな。まぁ、しゃべらなきゃすっげぇいいと思う。しゃべらなければ。

「だって寒いんだもん。シズちゃんが隣に居るとすっごく暖かいんだもん」
「俺の布団を奪ってどうする。そんなに寒ぃんならもっと厚着して寝ろ!」
「それは嫌だよ。寝返り打てなくなるじゃん」
「丸まって寝てる奴がよく言うなぁ!?」
「っていうかシズちゃん寝相悪すぎ、俺何回落ちたことか」
「知るか!嫌なら自分の部屋で寝ろ!」

あぁウゼェ。自己中心的で自分を軸に世界が回っているとでも言いたげな臨也の顔が非常にイラつく。そしていつも喧嘩になる。

「あ、っていうか俺いいこと思いついた」
「…あ゛?」

こいつの「いいこと思いついた」は基本アテにしないほうがいい。たいてい俺が犠牲となって…

「俺がシズちゃんに抱きついて寝ればいいのか」
「……最近耳の調子悪ぃなぁ。耳鼻科行くか…」
「酷いなぁ。この俺が抱き枕になってあげるんだから、シズちゃんは腕枕してよね」
「何で俺がお前と恋人まがいみたいな格好で寝なきゃいけねぇんだよ!意味わかんねぇよ!」
「じゃぁ布団いらないんだ?」
「…うっ」
「あはは♪シズちゃんってばほーんとからかい甲斐があるなぁ」

あははっと陽気な笑い声でその場を凍らす臨也。俺、もうこいつ殺していいかな。いいと思うんだよな。この俺が2年も耐えたんだぞ?

「そんな殺気立たないでよぉ。冗談だってば」
「…冗談に聞こえねぇから達が悪ぃんだよ。テメェの場合」
「それは褒め言葉として受け取っておくよ。時にシズちゃん、大学は?今日休みなの?」
「あ?」

可愛らしく首を傾げる臨也。それで黙っててくれりゃ文句ねぇんだけど。(男だが)
今日は土曜日。だから臨也もこんな時間まで寝ていたのだろうが、当の俺は…

「やべぇ!!トムさん待たせてたッ!!」
「…!また田中トム?」
「昼飯奢ってくれるって言って…やべぇ!!」

俺は急いで厚手のセーターとズボンをはいて授業の用意を鞄につめる。
あ、田中トムっていうのは俺の大学の先輩で、すっげぇ尊敬できるかっこいい人なんだぜ?
そんな人を待たせるわけにもいかず、俺は急ピッチで支度を終えて玄関に走る。

「…シズちゃん」
「あぁ!?」

靴紐を結びながら臨也の声に耳を傾ける俺。
だが臨也の声はいつものように張りがなく、どこか小さく聞こえた。

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