本棚▼デュラララ!!

□finds me【シズイザ】
1ページ/2ページ



何もないまっさらな世界。
そんなものが存在するとすればー…それはきっと人類の終わりだし、人ラブな俺にとっても終わってしまった世界。

ただ「存在」するだけの世界。

「…どこだよ…ここ…」

そんな幻想的な空間に、俺は立った今存在している。辺りを見回しても何もない。白い世界。
俺はその中でただ一人取り残されていた。…あ、一人なのはいつものことか。

「…よぃしょ…っと」

俺は身体を起こしとりあえず歩みだしてみた。勿論行く当てもないし、これではいくら歩いても無駄な苦労だけで終わりそうな気がするけど、それでも歩んでみる。

「…仕事…」

そういえば、こんな世界に来る前は波江さんと仕事を片付けていたんだっけ。四木さんに頼まれてたやつ、運び屋にお願いしたまんまだったなぁ。現実世界では時が動いているのだろうか…
俺は今この状況のことよりも仕事の心配をしていた。とそのとき、頭にものすごい激痛が走った。

「いったっ!!」

ごつんっとコンクリートの壁にぶつかったような、無機質な感触。…一瞬シズちゃんかと思って安心しかけた俺って末期だな。うん。今のはなかったことにしよう。
額をさすりながら上を見上げると、そこには見慣れたコンクリートマンションがそびえ立っていた。何もなかったはずの、この大地に。
俺はとりあえず入ってみる。暗証番号も一致した。

「…浪江さーん…?」

もしこれが本当の夢なら、浪江さんは居ないはずなんだけど一応呼んでみる。万が一ってこともあるじゃない?
だけど俺の必死の声は彼女には届かず、部屋には散らかっている書類が山積みにされていた。…これ、さっき浪江さんが整理していたやつじゃ…。ファインダーも一緒に置いてあるし、片付けようとしていたのかもしれない。

「…波江さんがいないってことは…やっぱり夢なのか」

夢なのに、ぶつかった壁の感触は生生しかった。
俺は少し恐くなった。と同時に楽しくなってきた。

「つまりここは、誰も知らない、…俺だけが存在する世界かぁ!」

あはははっと椅子の上でくるくると回る俺。
あぁ、なんて最悪な世界なんだ!俺だけが存在しているなんて!

「人間が存在しなきゃ、俺は最高につまらないのに!」

ダンッと床に着地をすると、俺はまた外に出る。そして無限の大地へと足を運ぶ。
俺が一歩一歩歩いていくと、だんだん後ろに物体が創造されていく。…これはきっと池袋。池袋の町並みが再現されているんだ。なんてリアルなんだろう。俺はこんなにも池袋を愛しているということなのだろうか!
こんなに愛している池袋は具現化されるのに、何故人間は具現化されないのか。

「俺はこんなにも人間を愛しているのに!」

両手を宙に広げる。空ではない。何もない宙だ。真っ白に広がる宙に、何かを求めるように両手を広げた。

「もしここが俺の愛するものたちの世界ならば、人間こそ存在すべきだろう!?」

俺は何に願い、そして求めているのだろう?
神か?仏か?はたまた自分自身にか?
いや、もうこの際なんでもいいさ。こんなファンタジーなことが起こりえるならば願いのひとつやふたつかなえてくれたっていいだろうに。

「…あぁ、自分で考えていて悲しくなってきた」

神も仏も、願いをかなえる人物など信じる柄ではないというのに。なんていうことだ。
自分が自分でなくなってきている?

「まさか…ははっ」

目から液体が流れ出す。
胸が苦しくて、眉間に皺を寄せてしまって、頭も痛くなってきて、

俺、もう、どうしよう。

どうしたらいい?

止まんないんだよ

誰か

誰か




「…臨也」
「…!」

ふと顔を見上げると、そこには嗅ぎなれた煙を吐く、バーテン服の男だった。男は常備していたサングラスを外し、俺のほうへと小走りで歩み寄ってくる。

「…なんで、よりにもよって君が」
「おま、え」
「最悪だ…俺もう死ぬのかな、殺されるのかなぁ?」

もう駄目だと感じて俺は軽い幻想に浸っていた。もしここがファンタジーの世界ならシズちゃんにだって殺されないのかな?せめてシズちゃんと同じくらいの力を用意してほしかったなぁ。

俺は諦めていたのに、彼はその温かい身体で俺を抱きしめる。

「…え?」
「やっと、見つけた…」
「し、シズちゃん?」
「もうどこにも行くんじゃねぇ!どこにもだ!!俺がいるから…、側にいるからっ…!!だから、お願いだから戻って来い!!!」



---臨也!!



あぁ、君は俺を探してくれたんだ。
そして、見つけてくれたんだー…

流石シズちゃん。

だって君は、

俺の

たった一人のー…


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ