本棚▼デュラララ!!

□言葉に乗せて【シズイザ】
1ページ/1ページ



「やだなぁ。ほんの冗談だってば。怒らないでよ」

俺は今、非常にピンチだ。どれくらいピンチかというと、全人類が俺を愛してくれるようになってしまうほどピンチだ。…いや、これじゃぁ嬉しいの間違いじゃないか。


「お前ホント馬鹿じゃねぇの?」
「シズちゃんに言われたくないね」
「あっそ」
「むぐっ…」


乱暴に俺の口へと舌を入れてくるシズちゃん。何度も、何度も。入れては抜き、入れては抜き。それを繰り返すたびに俺の心臓はヒートアップしていく。

「んぁっ、…んぅー…っ」
「(可愛い…)」

すっと服の中に手を入れてやると、それを必死に止めようとしてくるが、俺のこんな華奢な腕じゃ止められるはずなく、シズちゃんの指先は俺の腹筋をなぞっていく。
背中の出っ張った骨をすぅーっとなでられた途端、俺の身体は異常なほどに飛び跳ねる。

「んなに気持ちいかよ…糞ノミ蟲ビッチ野郎が」
「んぁっ!…び、びっちじゃ、ない、もんっ!」

少し涙目に訴えてみるが、そんなの逆効果。シズちゃんを欲情させてしまうだけだと思っても、涙目になってしまうのだから仕方がない。


もう何回こんなことをしているだろう。

喧嘩をしていたはずなのに、ふとした次の瞬間にはシズちゃんに唇を奪われ、未遂まで持っていかれる。
シズちゃんは俺をビッチとか言うけど、俺って意外とそういうのしないタイプなんだよね。何で勘違いしているのか知らないけど、いい迷惑だよ。何度、何度こんなことを続ければ気が済むんだろうー…

少し凍りついた教室の中、俺の喘ぐ声だけが反響する。時刻は夕方とだけあって、外から運動部の掛け声が聞こえてきた。一度廊下を通る足音も聞こえた。そのたびに俺はどれだけ冷や汗をかいたことだろう。


「し、しずちゃっんー…もう、いいでしょっ」
「やだね。俺は今すっげぇむしゃくしゃしてるんだよ」
「ふざけんなっ」

何でそんなことで俺がこんな目に遭わなきゃいけない?冗談だろ。
何でシズちゃんは大嫌いな俺にこんなことするの?


何で、こんなことできるの?





「…いざ、や?」
「見、んなっ…馬鹿ッ」

片手で自分の顔をぬぐいながら、もう片方の手でシズちゃんの顔を押しのける。が、その手はあえなく彼の手によって捕まえられ、拘束される形になってしまう。

「おかしい、だろ…」
「…」
「何で泣いてんのか、…俺だってわかんねぇーもん」

だけど、止まらないんだ。何でだろう。
今日は泣きたい気分なんだろうか?

「けど、なんか、泣きたい気分なのかも、ね」

ははっと笑って見せるけど、シズちゃんは真剣な顔を崩さなかった。
ましてや、俺の涙を拭い去ろうとせず、ただただ貪欲に俺の唇のなかを貪っていた。

「んっぁ…やっ、や、だっ…」
「臨也…」
「シズちゃん、シズちゃん、っだめ、なんだよぉ…」

拘束されていた腕を開放されると、俺は何故か自らからだが動いてしまった。


「おれ、シズちゃんに触られるたびに、心臓いたいんだよっ…」


だからもうこんな関係やめたい。いつものようにただ殺しあう関係でいよう?それなら、俺も、君も、ずっとー…


「それじゃぁ、俺が満足できねぇんだよ」
「…へ?」
「お前に触れていないと、俺は心臓が痛いんだよ」

ぺたりと、少し熱を帯びた手のひらを俺の頬にあててくるシズちゃん。


「臨也、」
「…−っ」
「お前は、俺と同じくらい苦しめばいい。いいじゃねぇか、俺ばっかり、」


あぁ、どうしよう。



早く気づいていればこんなことにはならなかったのに!



「っ!?」

シズちゃんの唇へ、俺の唇を重ねる。初めて俺からシズちゃんの唇へと。ゆっくり、

「馬鹿、だなぁ…」




「好きだよ」

そう言って俺を抱きしめて。

そうすれば苦しみなんてなかったことにしてあげるんだからさ。



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ