本棚▼デュラララ!!

□君に向いた世界【イザ→シズ】
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来神高校の夏。
彼らはいつものように屋上で昼食をとっていた。

「シズちゃんまたいちご牛乳飲んでるー。マジ女々しい。気持ち悪いよ」
「うっせぇなぁ。つかなんでお前と2人なんだよ。新羅と門田はどうした」
「2人は俺たちと違って色々と学校やらクラスに貢献しているからね。ましてやシズちゃんみたいに迷惑かけて学校破壊したりはしてないよ」
「俺がいつ好きで破壊したって言うんだよあぁん゛!?」

きゃーこわーいっと臨也は静雄と距離をおいてみるが、予想外に彼はそれ以上に近づいてくることはなかった。
人2人分ほどの距離が空く。

「…俺たちって何で戦争してるのかなぁ」
「何イキナリ言い出しやがる。んなもん、テメェが気に食わねぇからに決まってんだろぉがよぉ」

いざやくんよぉと眉間に皺を寄せながら必死に殺したい衝動を抑える静雄。臨也はその言葉を聴いて、酷く安堵した。

「だよねぇ。俺もシズちゃんのことなんか大嫌いだし☆」
「ッブチッ」
「きゃは。そろそろ逃げた方がいい感じ?」
「…俺としては逃げずにその場からうごかねぇでほしいけどなぁ」
「アハハハ!俺はまだ殺されたくないから退散するとしよう」
「イザヤァアアア!!待ちやがれェエエエ!」

そう。これこそが2人の関係。普通。出会った瞬間にこのような関係になったのだから、この関係が2人にとっては普通だった。

でも、戦争をすることが本当に普通なの?

折原臨也はほんの一瞬、そんなことを考えてしまった。だから先ほどのような質問をしてみたのだが、どうやら無意味だったらしい。

何も心配することはない。これが普通なのだから。

だから、ねぇ、

戦争しようよ。


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池袋某所。


「あぁん?戦争だぁ?」
「そう。戦争。ホントの戦争しようよ」

大通りでナイフと標識を構えた2人が珍しく会話を繰り広げる。
傍観していた野次馬も「とうとう頭がおかしくなったか?」と思い、面白半分で傍観を続ける。

「お前、…とうとう頭おかしくなったか?」
「やだなぁ。シズちゃんに言われちゃおしまいだねぇ」
「…今のは聞かなかったことにしといてやるよォ。で、何で戦争なんだよ」

ようやくその質問?と言ったような顔で静雄を見る臨也。その顔は酷く、幸福に満ち溢れていた。

「だって、こんなお子ちゃまみたいな喧嘩、俺もう面倒くさいし。そろそろ本気で決着つけない?シズちゃんの相手するの疲れたんだよ」
「俺だってテメェの相手なんざ御免被るぜ。…そうか、やっと殺される覚悟ができたか」

そういって至極嬉しそうな顔でにやっと口角を上げる静雄。臨也もそれにつられて哂う。

哂う。


「アハハハッ!殺されるのは君の方だっていうの!」
「ッ!待ちやがれ!!!」

急に臨也が方向転換し、角の路地へと入っていく。

あぁ、懐かしい。

そういえば、高校時代のいつだったか、ここの通りを走っていた。今のように、彼に追いかけられて。

「イザヤァアアアア!!」
「こっちだよーシズちゃーん!」

アハハハっと、成人男性にしては甲高い声を池袋中に広める。その声を聞きつけた町の人々は「またか」と心底迷惑そうに思うのだった。

と、そのとき。


「ッ!!!?」


にやりと、臨也が微笑む顔が一瞬だけ見えた。

静雄は勢いよく道路へ叩きつけられ、2、3度地面に跳ね返る。トラックは静雄の強大な身体に耐えられなかったのか、少しへこんでいた。

「だ、大丈夫ですかっ!?」
「アハハ、彼丈夫だから。はい、お礼」

諭吉が印刷された紙幣をトラックの運転手に手渡し、すぐここから立ち去れと警告を下す。

彼はこんなことでは死にはしない。

臨也はすぐに静雄の真上に顔を出し、

「どう?痛い?」
「…っ」

いくら強大な身体でも、限界というのはある。そのことを臨也だけは知っていた。

「1週間は寝れば完治するらしいけど、やっぱすぐには起き上がれないんだ」
「臨也ァッ」
「アハハ!動かないでよ!」

ドガッと静雄の心臓に足をつきたてる。
すると静雄は心底嫌そうな顔をするが、全く痛くないような顔を見せる。
臨也はそれにイラついたのか、今度はナイフを取り出しつきたてる。

「…なんなんだよ。お前本当に人間から生まれてきたわけ?」
「はんっ、テメェのその貧相な身体で俺を傷つけられるわけねぇだろ」

心底勝ち誇ったような顔を見せる静雄。

…そうだよなぁ。そうだ。

臨也はふいに静雄をまたぎ、そのまま腹部へ腰を下ろす。

「何の真似だ。テメェ」
「…でもさ、呼吸できなかったらいくら君でも死ぬのかな?」
「は?」



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