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□不即不離【シズイザ】
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俺は臨也の2度目の補導のとき、アイツの家系事情を聞いた。事情聴取した同期にな。
そしたらアイツ、結構裕福な家に生まれて早くに母親を亡くしていたらしい。しかも父親は再婚している。
「…高校生でこれはキツイよなぁ…」
母親は5歳のときになくなっており、父親と2人で裕福ながらも寂しい生活をしてきたんだ。そして今度は再婚。
この間臨也がぽろっと吐いたんだが、一人暮らしをしているらしい。父親の再婚が理由で。
「…せめてルームシェアとか」
だからあんなひねくれ者ができるんだよ。どういう教育してんだよって聞きたいが父親も仕方がないのだろうな。多分気を使ってるんだと思う。臨也に対してと、新しい奥さんに対して。
「家族なのにな」
俺にはアイツに同情する事情もある。
俺も昔はこの力のせいで両親から気味悪がられていたから。幸い、俺には優しい弟がいたからまだ大丈夫だった。
そして俺は知っている。
一人がどれだけ寂しいことなのか。
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「じゃぁ、俺こっちだから」
マンションのほうを指差すと、父さんは吃驚した顔で俺を見た。
「あ、あぁ、そうだな。気を、つけてな」
「…ん」
俺は早くこの場から立ち去りたかったから早歩きで向かった。が、後ろから小さく俺を呼ぶ。
「い、臨也、」
「…?」
「飯は…ちゃんと食べているのか?」
…なんだよ。その目。
俺と目が合うと逸らされる視線。逸らすぐらいなら最初からこっち向くなよ。何なんだよ。
「…食べてるよ」
昼飯ぐらいは。
「そうか…なら、いいんだ。」
「…それだけ?」
「…あぁ」
「…あそ」
俺はぶっきらぼうに答えてセキュリティを解除し、自動ドアを抜ける。俺が住んでるのは高級マンションだからね。指紋認証式なんだ。
ま、金持ってることぐらいがとりえなわけ。
「…」
だから万引きなんて一回やってみたら終わろうって思ってて。全く縁のないものだと思ってたんだけど…
「…シズちゃん…」
面白いもの見つけちゃったからね。
俺は部屋の鍵を開け、そのまま寝室へと向かう。一人暮らしに4LDKもいらないと思うんだけどな。父さんが一応って。
一生ここに住まわせる気なんだろうね。
「はぁー…」
ばふっとベッドに飛び込む俺。上着と靴下を脱ぎ捨て、ベッドの上に上半身だけ起こして窓の外を見る。
「…満月だ」
月はいい。
月を見ることだけは俺の日課だった。
それだけが俺の心を癒してくれる唯一のものだったから。