本棚▼デュラララ!!

□あと一歩【シズ→(←)イザ←ドタ】
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「どーたーちんっ!」
「っ!!」

俺はいつものように本を読んでいた。のだが、この聞きなれた声で俺は毎回平穏を奪われる。
折原臨也。
こいつが現れるとろくなことがない…いや、少し訂正だ。こいつ自体は別に普通な奴なんだ。ただ少し理屈の塊で出来たような人間なだけで、見た目眉目秀麗を具現化したような容姿だし…
ただ、なぁ…

「い〜ざ〜やぁああ!?俺の目の前に現れるなって言ったよなぁ!?」
「…やだなぁ。好きで君の視界に入ってるわけじゃないよ。俺はドタチンに会いにきたの」

俺の高校時代の同級生、平和島静雄とは仲が非常に悪い。どのくらい悪いかというと、2人が並んで歩いているだけで周りの人間がざわざわするほど仲が悪い。明日は雨かはたまた槍でも降るんじゃないかと思うくらい。
案の定、俺の周りで食っていた奴らは席を移動し始める。

「うぜぇ。くせぇ。飯がまずくなる」
「酷いなぁ。俺可愛いでしょ?ね、ドタチン?」
「え?あ、あぁ…」

まぁ、かっこいいというよりは可愛いというほうが合っているが…それを自分で言うのはどうかと思う。
臨也は静雄の機嫌にお構いナシに俺の隣に座る。すると今日あったことや講義の話をぺらぺらと冗舌に話し出す。

「んでさその講義、まったくわけわかんないわけ。だって人があんなことしてそんな態度取る方程式みたいなの立てちゃってさ?人間って固定された式ごときであらわせれるほど簡単じゃないし。ってかそんなこと言ったら俺人間好きになんないしー。人間みんなそうなっちゃったら俺やだね。断固願い下げだよ。大体あのおっさん、この間のー…」
「あぁ゛!うるせぇノミ蟲!!」
「…うっさいなぁ。俺はドタチンと話してるんだけど」

今にもわれそうな割り箸ー…というかもう割れちまった割り箸をトレーに乗せて身を乗り出し、臨也の胸倉を掴む静雄。
や、やべぇ…また始まる…

「お、おい。ここ食堂だからやめとけ静雄」
「うるせぇ!!こいつがぺちゃくちゃうっせんだよ!つか何で普通にそこに座ってんだよ!?あぁん!?」
「何?シズちゃんの隣行った方がよかったわけ?あぁそっか。そっちのほうが視界に入りにくいもんねぇ。シズちゃんにしては冴えてる頭してるじゃん?何?頭打った?」
「……うぜぇうぜぇうぜぇ!!誰が誰の隣に座るって!?えぇ゛!?」

少し頬を赤らめる静雄だが、そんな彼の表情に気づかない臨也。…ホントに心理学部かよ。自分の事に関してはホント鈍感だよ。

「俺が、シズちゃんの隣に?ありえないね。やだキモチワルイ」
「こ、こっちの台詞だアホ!」
「アホなのはシズちゃんでしょ?大体アホって言うほうがアホなんだもん」
「それを言うなら馬鹿って言うほうが馬鹿だろぉが!」
「うわ、シズちゃんにツッコミされた。俺一生の恥…」
「いーざーやぁあああ!!!」

そうして静雄を本気でキレさせたと察した臨也は即座に逃げ出す。気づいたときには静雄の置きっぱなしのトレーと2人にきりにされてしまった俺。

「…片付けるか、」

俺は両手で2個のトレーを持ち上げて片付けに行く。
…臨也が不用意に静雄にちょっかい出したくなる理由も、少なくとも俺は臨也よりはその感情の正体を知っている。
静雄だって、あんな顔するぐらいならもっと素直になればいいものの。と俺は親友にフクザツな思いを抱いている。

「…かくゆう俺も、素直じゃねぇんだけどな」

それも、この関係がいつまでも続けばいいと、俺が心の隅で思っていたからだろうか?
…違うな。俺は怖いだけだ。

2人が抱いている感情がもし本当のモノになってしまったらと思うと、俺は素直に2人を応援できないんだ。
ただそれだけのことで、俺はー…

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