長編
□たった一つそれだけが
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「君の歌姫は、私の手の内にいる。……知っているね??」
「……知っています。でも、僕は……」
「そうか……残念だね。ならばこれはどうかな?? 君は今、“彼”の居場所をきちんと把握してるのかい??」
目の前の少年がかすかに息を呑んだのを見て、男は口元をわずかに歪ませる。
「……まさか」
「そう。君の大事な大事な宵闇は今ミネルバに乗っている。ミネルバは新設艦だ。不慣れな新人がたくさんいる。そんな場所だ、不慮の事故が、起きなければいいね」
「あなたという人は……!!!」
バンッ!!! と机を叩いて少年は腰を浮かす。
少年の顔色は青いを通り越してもはや紙のように白い。それでも男を睨みつける眼光は殺気に満ち溢れていて、並の人間ならそこで動けなくなるだろう程だ。
しかし、相対する男は残念ながら並の人間ではなかった。その眼光を真正面から受け止めて悠然と微笑んでいる。
そして少年は諦めたように今一度ソファに沈み込む。
「分かりました。あなたに……デュランダル議長に、忠誠を……誓います」
「分かってくれてありがとう、キラ君。」
「では忠誠の証に……」