そのいち
□取り留めておきたい
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「おい、名無しさん」
一緒の部屋にいるのに、少し離れて
遠くにいる彼女の名を呼ぶ。
いつもは呼べば、まるで犬が
尻尾を振るように、俺のところに来る。
…しかし、何故か今日は違う。
寧ろ、1人で悶々と悩んでいる様。
相談してこないのか?
それとも…俺が何かしたのか?
らしくもない不安の波が押し寄せる。
しかし、押し寄せる波を
少し押し返すのは俺のプライド。
聞きたくても聞けない俺の性格に
思わず心の中で舌打ちをする。
とりあえず、触れないでおく。
そう考えた時、名無しさんがこっちを向いた。
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