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□気を紛らわす
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『カミナリなんて怖くないもん』


俺にバレて図星でも強がりな君。
そういうところも嫌いじゃないけど
やっぱり意地悪したくなる。





「暗くなってきたね」


話している間に黒い雲が辺りを包む。
いかにも降り出しそうな気配になった。




俺は名無しさんから離れてまたベッドで
雑誌を広げ、さっきの続きを読む。




するとすぐに大粒の雨がザーっと音を立てて
外の地面や窓を叩き始めた。





ゆっくり傍に寄ってくる名無しさん。
俺はまだ知らん顔。





ゴロゴロ…



雨音とともに空がうねる。
やっぱりカミナリがきた。



暗い空には眩しいほどの激しい光。
それに負けないくらい激しい音が鳴り響く。






『リョーマぁ…』



情けなくて弱々しい声。
儚くて消えてしまいそうな声。


自分の中で意地悪しすぎたと少し反省する。




読んでいた雑誌をまたぱたっと閉じて、
愛しい名無しさんの方に目をやる。




自分の両手で両耳を強く押さえつけ、
ぎゅっと固く目を閉じている。
そんな彼女が何だか可愛く見えた。



きっと今、俺の顔は緩んだ表情をしている。
今、名無しさんが目を固く閉じていて
本当によかったと心底思った。






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