棗は意外と鈍感だから、名無しさんに見られていることに気付いていない。
このまま気付かなければいい。
それだと名無しさんが幸せになれないのかな?でも俺が君を幸せにしたいんだ。
放課後、誰もいない教室に君がいた。
「名無しさん?」
『あ、ルカ…どうしたの?』
「…大丈夫?」
『あ…うん、大丈夫だよ』
弱々しく微笑む姿がどうしても痛々しく見えてしまう。身体は傷ついていないのに、心がボロボロになってしまう君をもう見たくない。
「棗のこと諦めなよ。名無しさんだって届かないこと分かってるんだろ?」
『分かってる……。でも簡単に忘れられない…』
やっぱりそうだよね。そんな気持ちは痛いくらい分かる。
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