PrinceU
□さよなら
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『リョーマ、別れよ…』
別れというのはある日突然やってくるって誰かが言っていたような気がする。俺の場合は名無しさんからの誘いに部活だからと全て断っていたから、突然でもないのだが。
学校にある巨木の下。しかしいつもと違うのは、名無しさんが泣いていること。抱き締めたいけどそんなことが出来ない。格好悪いけど、ポケットに突っ込んだ手が情けなく震えている。
「…何で?」
何言ってんだ、俺。理由なんか分かっているのに何を聞いているんだろう。自分で自分の首を締めるってこういうことだろう。
『リョーマには、私なんかいらないんじゃないかなって…。ただの迷惑なんじゃないかなって』
違う。俺には名無しさんが必要だ…なんて言おうと思った瞬間、強い風が吹いて巨木の葉がガサガサと大きな音を立てて、俺の言葉を遮った。
『さよなら…リョーマ』
葉が静かになったと同時に歩きだした名無しさん。その後ろ姿があまりに凛としていて引き止めることさえ忘れた。
「ごめん、…名無しさん」
そんなことを呟いたって名無しさんには届いていない。今俺を包んでいるのは後悔だけ。
さよなら
(揺れる葉の下で)
(今でも好きだと伝えたい)
-END-
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