モノクローム

□ピンチはチャンス
2ページ/2ページ






「ねぇ」




話し掛けてきた人はちょっとハスキーな声だった。振り向くと私が今、1番関わりたくないと思っていた人。話し掛けてきた立ち姿は、まるでそんな気持ちを知っているように嘲笑って見えた。






『……越前くん』



私から出た声は何て間抜けなんだろう。驚いたからしょうがないか。我ながら情けないけど。




「越前、あんたのファンの子たち、何とかしてよ。おかげで名無しさんが困ってるんだから」



萌、あの越前くんにあんたって言えるのそうそういないと思うよ。きっとあなたぐらいだよ。




萌がそういうと越前くんは、ああ…と小さく笑った。え、今面白いところだったのかな?よく分からないな、この人。





「何でだと思う?」



私が不思議そうな顔をしていると、得意気な顔で逆に質問されてしまった。何でって分かんないから困ってるわけで。一体何なんだ、この人は。





「名無しさんが越前に何かした?」



萌が勝手にそう答える。萌と越前くんの話が進んでおろおろしていると、また越前が違うけど、と小さく笑った。




じゃあ一体何なのだろうか。考えても考えてもよく分からない。でも教えてくれそうな雰囲気もない。
困っていると、そろそろ越前くんのファンの子たちが来る時間になる。





「…ねぇ、越前。まさか違うよね?」


「多分当たってんじゃん?」



「まさかその事をファンの子たちに言ったとか?」


「言ったけど」




ん?知らない間にまた萌と越前くんの会話がどんどん進んでいる。
しかも何か萌が怒ってない?私、関わってるよね。全然ついていけてない。





『…萌?どうしたの?』


「名無しさん、もうあっち行こ!」



萌がガタッと立ち上がったと同時に、越前くんのファンの子たちが教室に入ってきた。ふわふわの栗色の髪の毛の女の子を先頭にして。





……これは万事休す?





ピンチはチャンス
(そんなの嘘だと思ってた)






-continue-





.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ