モノクローム
□ピンチはチャンス
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「ねぇ」
話し掛けてきた人はちょっとハスキーな声だった。振り向くと私が今、1番関わりたくないと思っていた人。話し掛けてきた立ち姿は、まるでそんな気持ちを知っているように嘲笑って見えた。
『……越前くん』
私から出た声は何て間抜けなんだろう。驚いたからしょうがないか。我ながら情けないけど。
「越前、あんたのファンの子たち、何とかしてよ。おかげで名無しさんが困ってるんだから」
萌、あの越前くんにあんたって言えるのそうそういないと思うよ。きっとあなたぐらいだよ。
萌がそういうと越前くんは、ああ…と小さく笑った。え、今面白いところだったのかな?よく分からないな、この人。
「何でだと思う?」
私が不思議そうな顔をしていると、得意気な顔で逆に質問されてしまった。何でって分かんないから困ってるわけで。一体何なんだ、この人は。
「名無しさんが越前に何かした?」
萌が勝手にそう答える。萌と越前くんの話が進んでおろおろしていると、また越前が違うけど、と小さく笑った。
じゃあ一体何なのだろうか。考えても考えてもよく分からない。でも教えてくれそうな雰囲気もない。
困っていると、そろそろ越前くんのファンの子たちが来る時間になる。
「…ねぇ、越前。まさか違うよね?」
「多分当たってんじゃん?」
「まさかその事をファンの子たちに言ったとか?」
「言ったけど」
ん?知らない間にまた萌と越前くんの会話がどんどん進んでいる。
しかも何か萌が怒ってない?私、関わってるよね。全然ついていけてない。
『…萌?どうしたの?』
「名無しさん、もうあっち行こ!」
萌がガタッと立ち上がったと同時に、越前くんのファンの子たちが教室に入ってきた。ふわふわの栗色の髪の毛の女の子を先頭にして。
……これは万事休す?
ピンチはチャンス
(そんなの嘘だと思ってた)
-continue-
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