モノクローム

□ここは既に敵陣
2ページ/2ページ





「あ、来てたんだ」



新崎さんが行ったあと、越前くんがフェンス越しに来た。
萌はファンのしつけがなってない、とブツブツ言っているけど彼は特に気にしていない。






「ねぇ、俺のことちゃんと見てた?」



見てたよ、と言うと越前くんが帽子を深く被り直した。これはもしや彼なりの照れ隠し…なのかな。





「おー、名無しさんじゃねーか!」


『あ、桃ちゃん!』



大きな背で大きな声。幼なじみの桃ちゃんが私たちのところに寄ってきた。こうして会うのは意外と久しぶりかもしれない。






「邪魔しないでくださいよ、桃先輩」



越前くんは小さく溜め息を吐きながら呟いた。その発言に桃ちゃんが、俺のこと先輩だと思ってねーだろ!って言っていたけど、桃ちゃん奇遇だね。私もそうじゃないかな〜って思った。






「集合!」



離れたところで部長さんらしき人の声が掛かった。その声に2人ともやべ!と顔を見合わせた。
そのままコートに戻るかと思いきや、越前くんが戻らない。






「終わるまで待っててくんない?一緒に帰るから」


『え?』



「わかった?」



彼の帽子の下は有無を言わさないような瞳をしていた。そのまま私は首をコクコクと上下に動かした。






ここは既に敵陣
(郷に入っては郷に従う?)





-Continie-






.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ