モノクローム
□ここは既に敵陣
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「あ、来てたんだ」
新崎さんが行ったあと、越前くんがフェンス越しに来た。
萌はファンのしつけがなってない、とブツブツ言っているけど彼は特に気にしていない。
「ねぇ、俺のことちゃんと見てた?」
見てたよ、と言うと越前くんが帽子を深く被り直した。これはもしや彼なりの照れ隠し…なのかな。
「おー、名無しさんじゃねーか!」
『あ、桃ちゃん!』
大きな背で大きな声。幼なじみの桃ちゃんが私たちのところに寄ってきた。こうして会うのは意外と久しぶりかもしれない。
「邪魔しないでくださいよ、桃先輩」
越前くんは小さく溜め息を吐きながら呟いた。その発言に桃ちゃんが、俺のこと先輩だと思ってねーだろ!って言っていたけど、桃ちゃん奇遇だね。私もそうじゃないかな〜って思った。
「集合!」
離れたところで部長さんらしき人の声が掛かった。その声に2人ともやべ!と顔を見合わせた。
そのままコートに戻るかと思いきや、越前くんが戻らない。
「終わるまで待っててくんない?一緒に帰るから」
『え?』
「わかった?」
彼の帽子の下は有無を言わさないような瞳をしていた。そのまま私は首をコクコクと上下に動かした。
ここは既に敵陣
(郷に入っては郷に従う?)
-Continie-
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