スターダスト
□未来、笑顔を望む
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危力とみんなと挨拶を交わしたあと、棗とみんなのところへ向かった。みんなは何も言わずに待っててくれて、ルカが来てくれてよかったね、と言ってくれた。
「そういえば先生に頼んだあれ、どうなったん?」
『手配出来たって』
学園を出てからどうしようと悩んでいたが、外国に行くことにした。ここにすぐ来れそうな距離だと来ちゃいそうだから。外国でホームステイをして学校に通うの。何も分からない異国の地で過ごすことは大変だと思うけど今なら何でもできそうな気がする。
「遠いなー」
『蜜柑たちが卒業する時に帰ってきてここにくるよ』
蜜柑たちが卒業して私もここに帰ってくる。きっとその時、一緒に卒業したかったなーって笑うだろう。
「名無しさんちゃん、そろそろ…」
ナル先生が言いにくそうに促した。門の外に迎えの車が到着したらしい。まだ話し足りないのにな……あ、私聞かなきゃいけないことがあるんだった。
『アリスストーンって何か意味があるの?』
「恋の伝説のやつか?」
「交換すると愛を誓うことになるんやって!」
恋の伝説?交換すると愛を誓うってことになる?アリスストーンにそんな意味があるの?知らなかった。そうなんだ、と納得していると棗が握る力を強めた。それでふと思い出す。
『じゃあ棗は交換の意味が分かってしたの?』
「当たり前だろ」
サラリと言われて彼の胸の中へぐいっと引き寄せられた。いつもなら恥ずかしさで彼を押し返すと思うが、今日はそんなのどうだっていい。
『愛を誓うってプロポーズみたいだね』
「プロポーズじゃねぇよ。それは次に会った時にする」
そう言う棗の顔は本当に同い年なのかと思うくらい大人っぽくて、瞳が未来を捉えている。何年後か私たちがまた笑顔で出会う未来を。
次会ったときはさらに大人っぽくなっているんだろうな。きっと棗のことを好きになる人が増えて。そう考えると心配かも。
「離れても心配すんな。名無しさんしか見てねぇよ」
どうして私の考えていることが分かるのかな。私も棗だけ、と微笑むと甘いキスがおりてきた。まるで周りに見せつけるかのように甘く熱く激しく。この感触を絶対忘れないように。
「愛してる、名無しさん」
『愛してるよ、棗』
もう一度、抱きしめる力を強めてから身体を離される。まるで行け、と背中を押すように。おかげで自然と背中が凛とする。私はゆっくりと門に向かって歩き出した。そして出る前に笑顔で振り返った。
『この学園でみんなに出会えて本当に楽しかったよ。またね!』
危力の人たちにもそうだったけど、さよならって言葉は使わない。またこの場所でみんなに会うために。そのためにはまずは私が第一歩を踏み出す。これからの未来を繋げるために。
未来、笑顔を望む
(また会えることを信じて)
-END-
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