名無しさん先輩は俺のもの。
なんて子供みたいなことを言うと、先輩に笑われてしまうから言わないけど。
『だから止めてってば!英二!』
「可愛いにゃー」
部活中なのにマネージャーでもある名無しさん先輩を後ろから抱き締めて、猫みたいにゴロゴロ言っている英二先輩。人に素直に甘えられることは尊敬するけど、名無しさん先輩は俺の彼女なんだよね。
『リョーマ、助けてー!』
少し離れたテニスコートにいる俺の名前を必死で呼んでいる。はいはい、なんて仕方なさそうに呟くけど本当は嬉しい。
「英二先輩、人の彼女にベタベタしないで下さいよ」
「おちびのケチ!」
「ケチでいいっス。名無しさん先輩行くよ」
不機嫌そうに膨れる英二先輩を放っておいて、俺は名無しさん先輩の手首を掴んで部室へ向かった。
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