PrinceU
□スタートライン
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「名無しさん先輩」
全ては君の唐突な一言から始まった。
友達が薄情にも先に帰ってしまったある日の放課後。1人で帰ろうと思い、昇降口を出た。
出てすぐの柱に寄り掛かっていたのは、我が青学が誇るテニス部スーパールーキーの越前リョーマ。
そういう噂には特に興味はないけれど、この前桃が自慢げに話していたから名前と顔くらい知っている。
彼女待ちとかかなと思い、彼の前を素通りする。声をかける理由がないし、それよりも話したことがない。
「ねぇ」
近くで聞こえる越前リョーマのちょっとハスキーな声。意外とこの声のトーン好きかも…なんて考えていると、急に腕を掴まれた。
「ちょっと聞いてる?」
『え………私?』
「他に誰がいるんスか?」
呆れたように大きな溜め息を吐いて、私の腕を離す越前リョーマ。私は周りをキョロキョロと見渡してみる。遠くでは部活をしている人たちの声がするが、近くには私たちの他にいなかった。
『いないね……』
「だからあんたのことを呼んだんだってば」
私の方が先輩なのに、あんたって。でもこの会話を聞いているとどっちが先輩だか分かんないか。
『ねぇ、何で私の名前知っているの?』
「桃先輩に聞いた」
あ、そっか。私も桃から越前リョーマの名前聞いたっけ。
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