最近風が冷たくなってきた屋上でリョーマとお昼ご飯をのんびり食べる。のんびりしすぎて5限をサボったりサボらなかったり。
でも今日はいつもと違う。だって今日は10月31日ハロウィンだから。
『リョーマ、トリック オア トリート!』
片言でお世辞でも流暢と言えない下手っぴな英語を発言して、両手を目一杯広げて差し出す。
「名無しさん、発音悪すぎ。何て言っているのかわからない」
まあ帰国子女のあなたからしたら片言すぎる英語でしょう。でも今時の中学生の英語レベルってこんなものだよ。
『伝わればいいの!』
むっと膨れながら言うと、リョーマが制服のポケットの中をごそごそと探している。
あ、あったという声がして私の両手にコロンと転がる小さなイチゴ味の飴。
「それでいい?」
『これ…どうしたの?』
「さっき堀尾にもらった」
へぇーと相づちを打ってから袋を破いて口の中へ放り込む。ころころと舌の上で転がすと甘酸っぱい味が広がって、ふわっと幸せな気分になった。
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