PrinceV

□とある日の放課後
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今日の放課後は部活がないから真っ直ぐ帰ろうと思ったのに、帰りに堀尾に引きとめられた。




「助けてくれよ、越前!」


何、と話を聞いてみるとこの前の英語の試験が悪過ぎてもう一度受けることになったらしい。助けて、と言われても俺に関係ないじゃん。




「本当に頼む!英語を教えてくれ!」


そんなに懇願されても困るんだけど。そもそも堀尾が点数悪かったのならきっとあいつはもっと悪い。そう思っていたらバタバタと廊下を走る音が聞こえてきた。噂をすれば何とかってやつ…あ、今は噂をしていないか。





「リョーマー!」


バタバタと音がする足音は俺がいる教室の廊下の前でぴたりと止まった。煩いくらい元気よく教室に飛び込んできたのは名無しさん。所謂俺の彼女。




「あのね、英語がね!」


「悪かったからもう一度受けなきゃいけないんでしょ?」


何で分かったの、と名無しさんが不思議そうに首を傾げた。やっぱり当たったんだ。まあ、名無しさんの英語が悪いなんていつものことだけど。




「だから英語を教えてほしいの!」


名無しさんが言ったことはさっき堀尾が言ったことと同じ。彼女以外が同じことを言っても関係ないと放っておけるが、名無しさんのこととなると別。頼られていることが素直に嬉しい。駄目?なんて聞かれると尚更。




「いいよ」


「じゃあ俺にも!」


「やだ」


即座にそう言うと堀尾が叫びながら教室から出て行った。
嫌なんて当たり前じゃん。全ては名無しさんだから、という前提が必要。名無しさんだから教える。こんなことを思うなんてベタ惚れすぎる。





「じゃあ名無しさん行くよ。俺の家でいい?」


その質問に名無しさんが大きく頷いて答えた。歩きながらスッと手を出すと彼女の柔らかい手が絡む。教室や廊下に誰がいようと関係ない。そういうところについては名無しさんと俺は似てるかも。





「リョーマのお家着いたらカルピンと遊ぼっと!」


「英語やるんでしょ」


「…そうでした」







とある日の放課後
(たまには彼女のために)




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