PrinceV

□キラリと光る誓い
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着々とプロテニスプレイヤーの道へと進んだ彼氏であるリョーマが久しぶりに日本に帰ってくるらしい。どれくらい会っていないんだろう。その期間ほとんど彼と連絡を取り合っていなかった。何となく取らなくてもいいかなって。どうせリョーマは忙しすぎて連絡を返せないだろうし、生死はメディアで確認できる。連絡したいことがあったらリョーマから来ると思う。




″明日、日本に帰る″



アメリカから届いたのは僅か一文のメール。何で?なんて聞いてもきっと教えてくれないからどこで待っていればいい?とだけ送った。





「結局返事がない…」


帰ってくるその日になっても返事がないから私は家から動けずにいる。もう慣れたけどさ。それでも悪い方へ考えてしまう。友達に、連絡も取ってないんだから自然消滅じゃない?なんて言われたことがある。その考えが正しければ帰ってくるけど私には会わないってことになる。考えれば考えるほど積もる不安。リョーマが日本にいる間に何の連絡もなかったらもう自然消滅ってことにしよう。そう覚悟を決めると玄関のチャイムがなった。




「名無しさん、出てー!」



お母さんが遠くからそう叫んだ。はーい、と返事をして玄関へ向かう。そうだ、リョーマと自然消滅なら家を出て独り暮らしを始めよう。その方が新しい出会いもあるだろう。1人で納得しながら私は玄関のドアを開けた。





「え、」


目の前に立っていたのは私の悩みの種の人。普通の格好ならまだしもパリッとしたスーツを着た正装。何で、と私から小さく声が漏れた。





「日本に帰るってメールしたじゃん」


「そうだけど…」


まさか家に来るなんて思わない。しかも何で正装なんかしているんだろう。微妙な沈黙が私たちに流れた。





「ずっと連絡出来なくてごめん」


リョーマが小さく謝った。さっきまで悩んでいたけど今はリョーマが来てくれたから悩みが吹っ飛んだ。やっぱり自然消滅なんて嫌だ。私はこの人とずっと一緒にいたい。





「多分、名無しさんは今俺と同じことを考えていると思う」



スーツのポケットから小さな箱を取り出して開ける。そこにはシンプルな指輪。その指輪をリョーマが手に取り、私の左手の薬指に嵌めた。サイズはピッタリ。




「名無しさん、結婚しよう」


「…はい」


何でか分からないけど私の足はガクガクと震え出した。ボロボロと泣いてしまう、嬉しすぎて。





「今、家族全員いる?」


「いるけど…ってまさか」


今、挨拶する気じゃないよね。でもリョーマの格好がその気だ。もういいや、覚悟を決めよう。私はこの人と出会った段階で振り回されることになっているんだから。







キラリと光る誓い
(リョーマが両親の前に正座した)




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