PrinceV
□ゆるく
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いつになったらこの片思いは実るんだろう。名無しさんを思い続けてかれこれ何年になるんだっけ。
「ねぇ、リョーマ!彼女欲しいと思わないの?」
相変わらず何の前振りもなく、意味のわからない質問をしてくる。しかもその質問っておかしいよね。鈍感にも程があるんだけど。
「いらない」
アンタ以外は、なんて今は言わない。多分頭の上に大量のハテナマークを浮かべるだろうから。名無しさんを困らせたいわけじゃない。でも少しは意識してほしいんだよね。
「何で?」
「好きなやつがいるから」
そこで少しでも自分のことかと思えば俺も苦労しないんだけど。何で思わないのか不思議で仕方ない。誰がどう見たって俺に一番近い人はアンタなのに。
「誰?」
ほら気づかない。でももう慣れたといえば慣れた。こういう奴だからって言葉でまとまる。だけど今日は少しだけ攻めてみようか。
「俺の一番近くにいるのに鈍感な奴」
「リョーマの気持ちが伝わっていないなんて変わってる子だね」
「俺もそう思う」
でも好きなんだよね、と続ければ名無しさんがほんの少しだけムッとしたような表情をした気がした。思い過ごしだったら怖いけど確かにしていたと思う。
「リョーマ…」
「何?」
「彼女できても構ってね」
あまりに名無しさんが深刻そうな顔をして言うから思わず吹き出して笑ってしまった。そんな心配をする必要ないのに。
ゆるく
(だんだん伝わればいいかな)
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