PrinceV

□喪失感
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この前まで隣にいた人に振られるなんてこのご時世現実で起こりうる話。分かってはいたけど私はどこかで自惚れていたのかもしれない。私はきっとそうならないと。だけどそれはあまりに無惨で容易に起きた。まさかそんなこと…と何度も思ったけどまさかではなかった。




「いつまで泣いてんの」


呆れたように大きく溜息を吐くのはリョーマ。振られた直後、ふらふらと歩いて来て彼の家のお寺にあるテニスコート脇のベンチに座ってから何時間も経っていたらしい。その間に振られたことなどペラペラとリョーマに話してしまった。話せばスッキリすると言うが私はどんどん心がぐちゃぐちゃになった。




「辛いっていうのは分かるけど」


「分かるけど?」


私の気持ちなんてリョーマには分かるはずがないなんて嫌でも考えてしまう。自分でも嫌な奴だとは思うけれど今は世界中で一番私が不幸だと言えるくらい歪んでいる。





「一生負うほど傷じゃないと思う」


グサリと心の急所を射抜かれたそんな気分。本当は分かっているんだ、そんなこと。だけど今はそう思えないの。





「忘れさせてあげようか?」


「忘れさせてくれるの?」



あんたが望めば、とリョーマが口角を上げた。いつもみたいなポーカーフェースはどこに行ったのか、男の顔で近づいてきてゆっくりと唇が重なった。








喪失感
(心が埋まれば何でもいい)




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