PrinceV

□特別な日に特別を
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もう冬休みが始まったっていうのに青学にはたくさんの女の子たちが集まっている。彼女たちの手には可愛らしいラッピングが施された袋や箱を抱えていて気合い十分。これだけ見ればどこぞのアイドルかと言うほどの人気。




私の所属している吹奏楽部も今日練習だからもしかしたら運命的な何かで会って渡せないかな、なんて考えていた。そんな考えは甘くて渡すどころか姿さえ見ていない。部活の休憩中、他の子たちがプレゼントを抱えて彼を探しに行くのを見送ってから私もフラフラも探しに行く。どうせ見つからないんだからプレゼントは持っていかないで。




「どこにいるんだろう?」


テニスコート付近に彼が居たらきっと他の子に捕まっているだろう。だったら校内かなと思い、あてもなく探してみるけど見つからない。見つかったところでどうするの?って話ですが。不意に入った視聴覚室。昼間なのに黒いカーテンを締め切っていて、それでもその間から光が漏れている。その光の先、ついに見つけてしまった。




「雨宮じゃん」


これは神様がくれた運命的な何かなんだろうか。そうだったら感謝してもしきれないけど、わがままを言えばもっとタイミングを考えてほしかった。恋する乙女には心の準備とかいろいろあるんです。




「何やってんの?」


「越前くんこそ部活は?」


何やってんの?の質問にも答えずに質問で返してしまった。ちゃんと答えてからの方がよかったのかなって自分の発した一言さえこれでよかったのかって考えてしまう。




「大石先輩が騒ぎが収まるまで隠れてた方がいいって言ったから」


なるほど、さすが大石先輩。とても賢明な判断だと思います。 本当に面倒くさいよね、と彼に同意を求められたけど何と返していいのか分からなかった。だって私もその中の1人になりつつあるから。その流れで気になることが1個。





「女の子たちからのプレゼント全部貰うの?」


「いらない」


バッサリと即答。肺に穴が開いたんではないかと思うくらい、急に呼吸が苦しくなる。この場に持ってこなくて大正解だった。だけどそれは大間違いだと思う言葉が耳に届く。





「雨宮は?俺への誕生日プレゼントないわけ?」


もしこれが冗談や社交辞令、はたまたリップサービスだとしたらきっと罪になるだろう。持ってくればよかったと思ったけど、さっきいらないって言っていた。私が答えに迷っていると催促するように再び、ないの?と聞いてくる。




「あるけど…今は持ってない」


「学校にはあるんだ」


その言葉にコクリと頷く。でもいらないんでしょう?なんて声に出さずに捻くれてみたり。貰ってくれないんだったら聞かないでよね。




「テニス部の方が終わるの遅いからここで待ってて。それで帰りに貰うから」


人間っていうものは本当に驚いたときは声が出ないんだと知った。ただただ口を開けたまま、頭が回らなくなる。その状態が今の私。ちょっと待って、落ち着いて考えようよ。まず一つずついこう。




「越前くんは女の子からのプレゼントいらないんだよね?」


「いらない」


「私もプレゼント持ってきたの」


「だから帰りに渡してって」


ここだ、おかしいのは。さっきはプレゼントいらないって言ったのに今のはまるで受け取るみたいな言い方。混乱している私に気づいたのか、何でパニックになってんの?と聞かれた。不思議そうにしているけど原因は君だからね。




「プレゼントいらないのに受け取るみたいな言い方するから」


「あんたのを貰わないって言ってないじゃん」


ああ、今のでもっと分からなくなってしまった。私の頭の上にはたくさんのクエスチョンマーク。そんな私を見て大きく溜め息を吐かれてしまった。いやいやいや、溜め息を吐きたいのは私だからね。





「他の奴からのプレゼントはいらないけどあんたからのプレゼントは欲しい」


越前くんが言うには私からの誕生日プレゼントは受け取ってくれるってこと?えっとつまりそれって。じゃあ部活行ってくると彼は視聴覚室から出て行ってしまった。越前くんはどういうつもりか分からないけれど彼へのプレゼントと一緒に大切な言葉も一緒に贈れる気がする。






特別な日に特別を
(君に伝わるように)



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