PrinceV

□奪えるものならどうぞ
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いくら世間一般では私よりあなたたちの方が可愛いと思われても、いくらあなたたちがリョーマの前で可愛い声を出してもきっと彼はあなたたちに振り向かない。これはずっと変わることのない事実。




「リョーマくんに近づかないで!」


たくさんの女の子が団体でそう言いにきても私はその言葉をそのまま返したくなる。でも言わない、あなたたちがリョーマと関わったからって何が変わるわけじゃないから。リョーマのことを好きな気持ちは分かるけどそろそろ事実を重んじで受け止めてほしい。ねぇ、と私は切り出した。





「あなたたちはリョーマに告白されたことあるの?好きだって言われたことあるの?」


言ったあとピリッと空気が張り詰めて女の子たちが黙った。張り詰めた原因は私なんだけれど。だってリョーマにそんなこと言われたことないでしょう?その言葉を囁かれたのは世界中を探したって私だけなんだから。




「探したんだけど」


トントンと肩を叩かれて後ろを振り向くと問題の彼が立っていた。目に見て分かるように女の子たちの態度は豹変する。一生懸命可愛い声で話しかけているけどそんなのリョーマには意味ないんだってば。




「帰るよ。俺の家寄ってくよね?」


ぐいっと私の腰を引き寄せながら言うのはわざとだろうか。耳元で名無しさん?と甘く囁くのもわざとだろうか。だとしたら君の性格はかなりお悪いようで。どうしようかな、なんて思ってもない言葉で悩んだ振りをしながら彼の背中に手を廻す私も人のこと言えないけど。




「リョーマがここでキスしてくれたら行こうかな」


ニヤリと微笑んだのはどちらが先だったのかな。まるで見せつけるかのような甘ったるい唇が落ちてくる。どこまでも響くように音を出して私の腰を撫で回して心も身体も気持ちいいキス。チラリと目を開ければ女の子たちの歪んだ表情。それと同じくらいに私の性格も歪んでいるみたい。







奪えるものならどうぞ
(無理だとは思いますが)



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