PrinceV

□ノックアウト
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可愛らしい女の子の必死な告白。無関係だったら微笑ましくて応援したくなる光景だけど状況が違えば話しは別。その人、私の彼氏なんですけど。





「好きです、リョーマくん!私と付き合ってください!」


その言葉が中庭から聞こえて思わず草の陰に身を隠した。今告白されている彼の恋人は一応私なわけで、それは学校中の人が知っているはず。本当は堂々と邪魔をしに行けばいいんだろうけど、恋人がいると知っていながら告白する女の子に少し圧倒された。




「名無しさんちゃんと付き合っているのは知ってるけど、私もリョーマくんのことが好きなんです」


すごく必死なんだろうな。私もリョーマに釣り合おうと必死だったから分かる。彼女のことを考えて心の奥がズキンと少し痛くなる。でも嫌なのには変わりない。



それよりも彼は何で何も言わないんだろう。ずっと黙ったままで何考えているのか分からない。でもほんの少しだけ口角が上がった。




「ねぇ、そんなところにいないで出てくれば?」


…へ。
辺りをキョロキョロと見渡してもそれらしき人はいない。だけどその条件に当てはまるのはただ1人、私だ。



まさか違うよねと思いたいけれどきっとそのまさかだ。あーあ、何で分かったんだろう。こんなのただ恥ずかしいだけじゃないか。
仕方がないのでおずおずと草の陰から前に出る。あ、三角関係の出来上がり?





「さっさと出てくればよかったのに」


「そんなこと言ったって…」


ちらりと女の子を見れば俯かれてしまった。ああ、これで私の嫌な噂が立ちそうだ。原因はその子じゃなくて隣にいる彼なんだけど。じーっと見つめると彼がフッと微笑んで言った。




「俺はあんたしか見てないんだから」







ノックアウト
(誰が?……私が)




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