PrinceV
□たとえばなし
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「もし、名無しさんがあんたのところから離れたらどうする?」
名無しさんが席を立ったとき、私は名無しさんの彼氏である越前リョーマに何となくそう尋ねた。あの子がこの人のところを離れていくわけないけど、ただ疑問に思っただけ。
「名無しさんが俺から離れるなんてありえない」
ピシャリと返ってきた言葉。それは私もそう思うけど、例えばの話だってば。大好きな親友の彼氏だけど私はこの人が苦手。名無しさんがいなかったら絶対関わりたくない。
「名無しさんが望んで離れていくならそれでもいい」
「…他の人に取られても黙ってるの?」
彼は小さく返事をして頷いた。あの越前リョーマが自分の彼女を取られても黙ってるの?頭の上にたくさんのハテナマークが浮かぶ。何が何でも奪い取りそうなのに。
「絶対俺のところに戻ってくるから。戻ってきたらドロドロに甘やかす」
…そして二度と離れないように。
ニヤリと笑いながら言うから本気か嘘か分からないけど多分本気で言ってるんだろう。絶対戻ってくるなんてすごい自信。さすが越前リョーマと言えばそれ以上でもそれ以下でもない。
何も知らない名無しさんが帰ってきた。何話してたの?と聞かれたけど答えられない。この子は怖い人に好かれたものだ。
たとえばなし
(私もこれくらい誰かに愛されたいな…なんて)
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