PrinceV

□喜んで
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辛いとき、悲しいときに抱きしめてもらいたいと思うのは誰だっていいわけではない。今どこかにいる彼氏でもハズレ。今私の目の前にいる彼ただ1人だけ。





「光」


彼の部屋のベッドで彼の首に手を回して囁く。そうすれば私の名前を呼んで抱きしめてくれるって分かってるから。





「名無しさん、彼氏できたんやろ」


「好きって言われたから付き合ってるだけ」


恐ろしいわ、と笑いながら私の唇にキスを落とす光に言われたくない。私が誰かのものだとしても、はたまた光が誰かのものだとしてもそんなこと私たちには関係ないの。私の寂しさを埋めてくれるのは光しかいないんだから。






「名無しさんもアホやけど俺も大概のアホやな」


お互い様、なんて目が合う。温かで優しくて力強くて少し切ない瞳。切なくさせているのはわたしのせいなんだろうな。心の奥底で思っていることを言葉に乗せたら彼はどんな反応をするのだろうか。





「きっと私は光じゃなきゃ駄目だよ」


いつでもちゃんと思ってる。フラフラしてるから説得力ないだろうけど。そもそも私たちは恋人同士みたいな言葉を交わしたことがない。珍しくそんなことを言った私に少しびっくりして再び抱き締めてくれた。今度はギュッと力強く。そして耳元でとびきり格好付けて囁く。






「そろそろ本格的に俺のものにならん?」








喜んで
(光にも私しかいないらしい)




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