PrinceV

□シタゴコロ
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いつだってリョーマは私の相談相手だ。それは中学の時からずっと変わらない。最初は何考えてるか分からなかったけど、いつの間にか名前を呼び合うくらい仲良くなっていた。





「…今日は何?」


どうしてもリョーマに聞いてほしくて彼の家の前でずっと待っていた。プチストーカーみたいだけど彼は気にしてない。それどころか、こんなところに居たら危ないからと家の中に入れてくれた。





「彼氏に振られました…」


今はもう元彼だけど、なんて言って自虐。初めての彼氏だった。それなのに今までずっと一緒にいたリョーマとその人を比べていた。口には出さなかったけどそれがあの人には伝わっていたらしい。





「あんまり悲しそうじゃないね」


痛いところを突く。
…そうなんだよね。こんなものかって呆気ない感じ。多分本気であの人のこと好きじゃなかったのかなと思う。じゃあ私が本気で好きになる人って誰なんだって話。まだ高校一年生だから先は長いんだけど。






「リョーマがいいな、」


それはびっくりするくらい私の口から自然に出てきた言葉で。自分でもどういうつもりで言ったのか分からない。わけが分からずに俯いていると、リョーマがあのさ、と声を発した。





「名無しさんがどういうつもりで言ったか知らないけど、俺はいいように理解するから」



そう言ってリョーマの手が私の腕を引く。その力に勝てずに私は彼の方へ倒れこんだ。顔を上げるとすぐ近くにリョーマの顔。こんなに近くで見たの何年ぶりだっけなんて冷静に考えているとリョーマ手が私の頬に触れた。中学生の頃と比べてうんと大きくなった手のひら。





「ひとつ言うけど、男の優しさなんて全部下心があるんだからね」


「全部?」


「全部。もちろん俺も含めて」


あれ、そうだったらおかしいよ。リョーマが私に下心で接してるってこと?いやいや嘘でしょう。そんなわけないでしょ、と冷静になろうとしているのに顎を挙げられて口付けが舞い降りてくる。キスなんてされたら動けないというか、リョーマががっしりと私の腰と抱えているから動けないんだけど。酸素が足りず頭がクラクラして思考回路が止まる。抵抗することさえ忘れるくらい。







シタゴコロ
(お前が悪いと言わんばかりに)



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