モノクローム
□サボタージュの午後
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私が新崎さんに話し掛けられたのは今から1週間前の話だ。
あの日を境に、彼女が積極的に昼休みや放課後の時にリョーマくんに話し掛けている姿がよく目に入るようになった。
また私よりはいいと思ったのか、ファンの子たちも彼女を応援している。
「ほら、また喋ってるよ」
もちろん今日の昼休みだって例外ではない。萌が指差す向こうには、照れながらもリョーマくんと話している新崎さんが目に入った。普通に話してれば可愛らしい子だもんね。
彼女がリョーマくんに話し掛ける回数は確実に日に日に増えている。
「全く名無しさんがいるっていうのに…」
萌が呟いたその言葉は新崎さんに対してなのだろうか。それともリョーマくんに対して?
きっと彼女のことだからどっちもなんだろうな。
『でも毎日頑張ってるよね…』
「名無しさんは頑張らなくていいの?」
取られちゃうかもよーって萌がからかってクスクスと笑う。酷い、それでも友達か。
『信じてるもん、リョーマくんのこと』
「さすが、あの越前の彼女!言うことが違いますねー」
うん、萌は絶対私のこと馬鹿にしてる。でもきっとこれは彼女なりの励ましなんだろう、そういうことにしておこう。
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