モノクローム
□エデンの騎士
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おかしい。何かがおかしい。
最近、新崎さんがリョーマくんとお話していない。それは私にとってもリョーマくんにとっても、いいことなんだけど、何だか逆に怪しい。
―…ずっと前からリョーマくんのことが好きなの。だから彼と別れて?
私にそう宣言したのに、まさか動かないタイプ?いやいや、それはないだろう。めっちゃ頑張りそうだし。
『新崎さん、何を考えてるのかな…』
「さあね?私たち凡人には分からないことよ」
…まあ、確かになかなか理解し難い。
でもどのタイミングで何が起こるから分からないから、怖い。
「何かあったら言いなよ?」
「俺にね」
『っうわ、リョーマくん!』
放課後の教室にテニス部なら誰もが憧れるジャージを脱いだリョーマくんが現れた。…なんて難しいことを言ってるけど、単純に学生服を着たリョーマくんが現れたってこと。
『あれ、部活は?』
「今日は軽い打ち合いだったから」
『どうだった?』
「勝ったに決まってんじゃん」
得意気にニヤリと笑うその顔が意外と好き。何かあどけない少年っぽくて。
『あれ、桃ちゃんは?』
「英二先輩と騒いでたから置いてきた」
「ああ、想像つくわ」
私も萌に同感。容易に想像されてしまう桃ちゃんは可哀相だけど、まあ仕方がない。
「じゃあ先、帰っていいよ」
『え、でも…』
「この前は私たちが先に帰っちゃったじゃない。ほら越前、名無しさんをつれてけ」
「言われなくても」
あ、またニヤリと笑った。…じゃなくて、彼は遠慮って言葉を知らないのかな。うーん、知らなそうだな。平凡の私は遠慮の塊で生きてきたっていうのに。
『じゃ、じゃあね!』
萌に別れを告げてから、リョーマくんに手を引っ張られて教室を出ていく。
階段を下りようと曲がったとき、ふと私たちがいた教室が目に入った。その時、ゆらりと揺れた影。
あれ……?逆光でよく見えなかったけど、誰かが教室に入ったような気がする。
しかし、リョーマくんが先に行ってしまったので追い掛けることを考えて気にも止めなかった。
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