モノクローム
□見守る優しさを
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「名無しさんちゃーん!」
「…また来た」
ちなみに今の発言は私じゃなく、萌が言ったことだからね。
休み時間の度に来て私の名前を呼ぶ。本当は私の名前を呼びたいわけじゃないくせに。…もう朝から何度目だろう。
「…越前は部活行ったけど?」
「ふふ、分かってるよ〜」
柔らかい微笑み。本当の性格を知らなければ、ただの可愛い女の子で終わるのに。知ってしまったから恐ろしい子になっている。
「ねぇ、名無しさんちゃん。一緒にリョーマくんの応援行こ?」
甘ったるい声出しすぎ。もう本性出せばいいのに。もうこういう子の対処の仕方が分からない。
「行こーよー!」
『…私、行かない』
もっとしつこく誘ってくるかと思った。だけど新崎さんは分かっていたように、ふふ、と妖しく微笑んだ。
「じゃあ私、1人でリョーマくんの応援行くね!あ、ちゃんと名無しさんちゃんは来ないってこと伝えとくから〜」
…嵌められた。最初から私が断るの分かってたんだ。本当に頭いいなあ。
新崎さんが軽い足取りで教室を出ていったあと、私は机にうなだれた。
『リョーマくん、新崎さんのこと信じちゃうのかな…』
「もしそんなことがあったら一瞬で別れさせるからね」
うわあ、萌の目は本気だ。本当にやりかねない。
『…でも大丈夫。リョーマくんはそんなこと信じたりしないよ』
その言葉は萌に教えてあげているのか、自分自身に言い聞かせているのかよく分からない。
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