新崎さんが出ていったあと、屋上に沈黙が流れた。心なしか2人の雰囲気がいつもと違う感じ。
『あの、助けてくれてありがとう…』
沈黙を破ってみる。するとリョーマくんは返事の代わりに私を腕の中から解放した。やっぱり2人とも何か違う。多分怒っているんだと思う。
「どうやら越前、考えていることが一緒みたいね」
「らしいね。あんたと合うなんて意外」
「名無しさんのことだからね」
「確かに」
お互い顔を見合わせないまま、私には意味の分からない会話を続けている。萌が名無しさんのことだから、と言っているから私のことらしいけど…。
「どっちが言う?」
「……俺が言う」
リョーマくんはわずかに切ない表情を浮かべている。その表情はいつもの生意気そうではなく見たことがない顔。
「そう。じゃあよろしく」
そう言って萌が屋上を出ていく。私が萌!と彼女の名前を呼んでも振り返ることもなく。
屋上には嫌な空気が流れたまま、私とリョーマくんの2人きりになった。
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