AliceV

□真夜中ラプソディー
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冷たい冬の風が寒い夜をより寒くしている。ガタガタと音を立てて風が窓に当たるのを怖いと思う人がいるだろう、と考えてパッと思いついたのはたった一人だけ。それでも彼女は多分寝てるだろうと考えたのもつかの間、部屋のドアがノックされた。




「棗、起きてる?」


ドアの向こうに儚く消えてしまいそうな弱々しい声。声の持ち主なんて顔を見なくてもわかる。たった今そのことを考えていたんだから。彼女以外だったら多分俺は迎え入れない。





「寝れないのか?」


ドアを開けてそう言えば、腕の中に飛び込んできた。その背中に腕を回せば、ヒヤリと冷たくなっていた。寒くて暗い廊下を1人で歩いてくるなんて、こいつにとってどれ程怖いことだったんだろう。




「ここで寝てもいい?」


そんなのいいに決まってんだろ。涙ぐんだ瞳で言われてダメだと言うバカはいない。いろいろ問題はあるけれど言わないでおこう。名無しさんがゆっくりと俺が寝ていたベッドに潜り込む。俺の中でグラリと何かが揺れたのは仕方がないことだけど、今はダメだと懸命に邪念を振り払ってから俺も名無しさんの隣に寝ころんだ。





「…風の音が怖くて眠れなかった」


そう言ってぎゅっと抱きついてくる彼女をさらに強く抱きしめ返す。これで名無しさんが安心するんだったらいくらでもしてやる。髪を梳かすように撫でていれば、腕の中でスーッと規則正しい寝息が聞こえ始めた。俺にとっては拷問だけど名無しさんには敵わない。寝ている彼女に口付けをひとつ落として俺も目を閉じた。







真夜中ラプソディー
(夢の中でも会いましょう)



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