勘違いしないでほしいんだけど、私は自分のことを素敵だと思って生きていないし、むしろ卑下して生きているつもり。もう一度言うけど勘違いしないでほしいんだけど。
最近棗くんと頻繁に目が合う。じーっと刺されるような視線に気づいて振り向くといつも棗くん。最初は私の勘違いだと思った。だけど何度も何度も感じる視線。見つめられてしまうとあの赤い瞳から目が離せなくなる。
何で見てるの?なんて聞けるほどの勇気は持ち合わせていない。だから何で見られているのかは分からないまま。
ほら、まただ。さすがに気になる。もう勇気がないとか言ってる場合じゃないのかもしれない。だって私も彼のことを目で追いかけてしまうから。だったら勇気を振り絞って聞いてみようか。これで勘違いだったら笑えない。
「ねぇ、棗くん。何でよく目が合うの?」
そう聞くと彼は口角を少し上げて妖しく笑った。そして上から目線でこう言う。
鈍感
(いや、本当は気づいてるよ)
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