AliceV
□らしくあれ
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寒い日、学園から寮への帰り道。隣にいる彼を見ながらふと付き合い始めた頃のことを思い出す。あの時は必死だったなと。
「今日のあれってさ!」
「棗はどう思う?」
「そっか!私はね…」
棗にダメもとで告白して、まさか付き合えるなんて夢にも思ってなかった。付き合い始めたばかりの頃は会話が途切れて無言になるのが怖くて常にマシンガントーク。
あれから数年。考え方も変わって棗と無言でも怖くない。寧ろ無言の方が私たちらしくていいなって思えるようになった。そんなことを考えられるなんて少しは成長したのかな。あの頃は必死すぎて思い出しても可笑しい。
「何笑ってんだよ」
「付き合い始めた頃のことを思い出していたの」
「名無しさんがマシンガントークのとき?」
「…もう忘れてください」
棗も覚えていた。恥ずかしいからと言うと彼がフッと笑う。そういう表情を見ると心が温かくなって数年経った今でも変わらず…いや、より一層好きだなぁって改めて実感。
「…ん」
「ん!」
スッと出された彼の手に自分の手を重ねる。手を繋ぐとこさえ何年か前は緊張してぎこちなかった。すっかり繋ぎなれたその手をギュッと握れば温かい。
らしくあれ
(それが長続きする秘訣)
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