AliceV
□嵐の前触れ
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出来るだけ目立ちたくない。そう思って生きてきた。
アリスを持ったせいで以前住んでいたところでは物珍しがられて注目された。それに比べてこの学園はいい。外に出るなどの自由はないけどみんながみんなアリスを持っているから注目されなくて済む。
天賦の才能を持った中でも平々凡々に過ごしていく。それが私の願い…だったのに。
「…何だよ」
呆然と立ち尽くす私と座っている彼。最初に交わした言葉がこれ。私の中の関わりたくないランキング第1位の人、日向棗くん。席替えでまさかの隣の席。彼はいつもルカくんの隣だったのに。今回はちゃんとくじに参加していた。そして関わりたくなかった人は私の隣の席の人になってしまった。
「…よろしくね」
変に目をつけられても嫌。必要最低限の挨拶はする。それが平凡に過ごすための知恵。そもそも彼は私のこと知っているんだろうか。他人に興味ないっていうオーラがビシバシ出てる。
「雨宮名無しさん」
彼が不意に私の名前を呼んだ。再び呆然唖然。よろしくね、の返事としておかしい。絶対呼ばれるようなタイミングじゃなかった。失礼だけどこの人は頭がおかしいのかすら思った。頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるのが分かったのか彼はフッと笑った。
嵐の前触れ
(そういう予感は当たるんだよね)
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