ユーレカ
□あれは恋と呼べたのか
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莉緒に瞬間移動してもらって私たちは北の森にあるベアの小屋に行って紅茶を出してもらっていた。ベアが入れてくれた美味しい紅茶を一口飲んでようやく落ち着いた。
「何で急に瞬間移動してなんて言ったの?」
さすが私が唯一信頼している人。聞いてくるタイミングもばっちり。本当のところなんて説明していいか分からない。言いたくなかったらいいよ、の言葉に私は首を横に振った。そして長くなるけど、と話し出す。
「私が学園に来る前、今日転校してきた日向棗に会ったことがあるんだ」
隣にいた金髪の人は知らないんだけど。アリスって知ってたの?と聞かれたから学園に入る前の記憶を思い出す。うわ、思い出したくもない記憶が出てきた。私がひどく顔を歪めたのか、いろいろ知っている莉緒がごめんと呟いた。大丈夫だよ、今朝そんな夢を見たから、と足すと今度は莉緒が歪んだ表情をした。しかし今聞いてもらいたい話はそれじゃないから話を戻す。
「私がいた学校に転校生で彼が入ってきたの。私はその頃学園から逃げてたから追っ手に捕まりそうになった。いつもはアリスで逃げるんだけどその時は多分結界のアリスとかを使われてて力が出なかったの」
黒い服を来た男の人たちが捕まえようと手を伸ばしてくる。アリスも効かなくて怖くて声も出ない。もうダメだと目をぎゅっと瞑った。
「その時彼が助けてくれたの。その時は多分アリスを使ってなかったと思う」
それから彼は一週間も経たない内に他のところへ引っ越した。今考えれば彼も学園から逃げていたんだと思う。それからいろいろあったのはすぐだから結局私は学園に入ることになったんだけどね。
「…で、好きになっちゃったんだ?」
「そんなこと言ってない!」
ニヤニヤと莉緒が言ってくるのを慌てて否定する。いや、会いたくて会いたくてたまらなかったくらいだからそういう感情もあると思うけど…。
「ここでは知らない振りをするつもり。それが彼のためだもん」
私なんかと関わっても彼にとって害でしかない。もちろん莉緒にも害でしかない、と聞こえるか聞こえないかぐらいの声で言ったのに莉緒から思いっきりのグーパンチ。
「まだそんなこと言ってんの?」
「え、聞こえた?」
「聞こえなくても分かる!」
それはすごい。きっと莉緒にしか出来ない技だろう。怒っている莉緒には悪いけどそれは事実だ。莉緒だって危力に目を付けられそうなんだから。
「私は自分の意志で悠と一緒にいるの!」
文句ある?の言葉に慌てて首を横に振った。こうして怒る莉緒は本当に怖いけどちゃんと支えられているって実感できる。だから彼と関わらなくても平気。
あれは恋と呼べたのか
(知る必要のないことだけれど)
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