ユーレカ

□三日月の夜
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彼が危力に入って何日か後。ペルソナから本部に集合と呼ばれ、任務に連れて行かれる。よかった、今この場に彼はいない。入ったからってすぐに任務をするわけでもないみたい。とりあえず一安心。





「悠、行け」


大勢の敵を目の前にしてペルソナがいつものように言った。誰よりも先に第一線に出されるのが私。彼の時より遥かに濃い霧を出して視界を失くすと敵の誰かが叫んだ。




「舞姫だ!」


最初にそんな名前が付いたのはいつの頃だっけ。私がアリスを使うことで大気中の水滴が舞って霧になるからそんな名前が付いたんだっけ?よく分からないけど気が付いたらそう呼ばれていた。





「周りに学園の奴らがいるぞ!気をつけろ!」


そんな言葉があちこちで飛び交っているけどもうそんなの遅い。他の危力の人たちのアリスで悲鳴と生臭さと共にだんだんと音が消えていく。もう今日の任務は完了かな。





「ご苦労だったな」


任務が終わって戻るとペルソナが珍しく労いの言葉をかけた。そんなことって滅多にないのに。だからかな、何だかすごく嫌な予感がする。





部屋に帰ると急に襲われる大きな罪悪感。任務中の私の心は驚くくらい冷酷。だってそうしなきゃ自分の身を守れないから。そんなのただの言い訳にすぎないんだけど。





学園の敵の人たちはどうして学園と戦おうとするんだろう。みんな構わないでいればいいのに。どうして構ったりするの?どうして戦おうとするの?任務が終わったあと毎回のようにそう考えているけど答えは出ない。





「もう1時過ぎてるんだ…」


明日も普通に授業があるのに。我ながらよくこんな状態でやっていけるなって思う。みんなは当たり前のように眠っている時間。初等部で私以外に起きている人っていないと思う…あれ、廊下を歩く足音が聞こえる?ペルソナじゃないよね?初校長のところで任務の報告に行っているはずだから。じゃあ誰?部屋の中で身構えているとその足音は私の部屋のまえを通り過ぎた。一体何だったんだろう。







三日月の夜
(霧と共に何人も消えました)




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