ユーレカ

□嘘 うそ ウソ
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初校長が言った通り、任務がない日々が続いている。まるで自分がアリス学園にいる普通の生徒になった気分。だけどそれはとんだ間違えだったと知る。




「悠ちゃん、このプリントを棗くんのところに持って行ってくれるかな?」


帰ろうと思ったところにナルがプリントを持って声を掛けて来た。そういえば来てないなって気になってたと言えば嘘じゃない。だけどまさかプリントを持って行くなんて、と断ろうと思ったのにナルが有無を言わせない。




「パートナーだよね?」


パートナーだからってそんな強い言葉じゃないって分かってる。だけど私はプリントをバッと受け取ってしまった。任務がない普通の女の子になった気分なのかと誰か止めてくれればよかったんだ。




彼の部屋は初等部唯一のスペシャルのところ。私も入学のときスペシャルの部屋を用意されたけど断ったから今はトリプル。渡して一瞬で帰ろう、きっと彼は私の任務姿を見て引いているんだから。名前プレートを確認してコンコンとノックをする。




「え」


その短い言葉はガチャリとドアを開けた彼が言ったのか、彼の姿を見た私が言ったのか、はたまた声が重なったのか分からない。とりあえず声が出た。




「何?」


「プリントを…」


そうだ、すぐに渡して帰ればいいんだ。例え彼の左目が怪我をしていたとしても。プリントを渡せば彼が受け取った。ほら、もうUターンして帰れば…。




「その左目…」


何やってんだ、私。関係ないんだから気にしなくていいのに。私の意思はどれだけ脆いんだろう。その脆い意思が壊れてまで聞いたのに彼は何にも答えない。何でって言う前に何となく分かってしまった。私の足はさっきとは違って帰る方向。いや、正しくは本部へ。




「待て。どこに行くつもりだ」


「決まってるでしょ!初校長のところ」


初校長は私にはしばらく任務がないって言った。その言葉通り任務がない日々だった。だけど…また気づかなかった私自身も許せない。初校長のところに行きたいのに彼が手を離してくれないどころか部屋に連れ込まれた。







嘘 うそ ウソ
(何を信じていたんだ)



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