ユーレカ
□現実逃避のティータイム
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彼の部屋に連れ込まれて私は一体何を信じていたんだろうって後悔した。どうして初校長の言葉を信じてしまったんだろうって。少しでも疑いという言葉を頭を過ぎらなかった過去の自分を全力でぶん殴りたい。
「任務やったの?」
「お前だってやってるだろ」
そう言われたら何も言えないけど彼に任務をやらせないようにしていたのに。どうしてしばらく任務はないっていう甘い言葉を信じたんだろう。
「誰と組んだの?」
当たり前のように返ってくると思っていた。だけど組んだ人の名前は返ってこないで黙ったまま。まさかとは思う。だってまだ危力に入ったばかりだから。いや、違うんだ。そんなのは私の勝手な考えなだけであって初校長の考えじゃない。
「まさか1人やったなんて言わないよね?」
「だったら何だよ」
その言葉を聞いていてもたってもいられずに彼の部屋を出て行こうとドアの方向に向かう。今度はちゃんと言わないとダメだ、私に全部任務をやらせてくださいって。もう普通の生徒でいるのはお終い。
「行くな」
「離して」
あと一歩でドアに手が届くところで後ろから抱きしめられる。どう足掻いたって腕の中から出られない。その力が切なくて何となく泣きそうになってしまうのはなぜ?
「前も言っただろ。守ってやるって」
「私は守ってほしくなんかない」
「嘘つくな」
嘘じゃない、私が彼を守りたい。後ろから抱きしめている力が少し強まった。やっぱり切なくて涙が出そうになる。思わず身体中の力を抜いて彼の腕の力に全てを預けてしまいたいくらいに。だけどそれじゃ駄目なんだ。私は普通の女の子じゃない。
「離して!」
さっきとは違って渾身の力で腕の中から逃げ出す。誰か何やってんだって叱ってよ。お前は守られるような普通の女の子じゃないんだって言ってよ。きっと私が向かっている先にいる人は言ってくれる。机に肘をついて嘲笑いながら、ようやくそのことに気づいたのかって。
現実逃避のティータイム
(もうおわりなの)
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