ユーレカ

□僕等の悲劇は出会った事
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準備は出来たか、といつものようにそうやって聞いてくる言い方は全く疑問系じゃないペルソナ。文句の一つでも言ってやろうかと思うけどそんなことをしている場合じゃないみたい。もう敵がすぐそこに来ているみたいだから。




「行け」


今度は本当の命令口調。私はペルソナから離れて歩き出す。ああ、彼にもこんなことをさせちゃったんだよね。こんな闇の世界に浸らせるつもりはなかったのに、なんて歩きながら考えているとすぐに大勢の人集りが見える。その集まりに向かって私は歩むのをやめない。




「舞姫だ!」


ようやく名も知らない敵の1人が私の存在に気がついたみたい。気づくの遅いよ、と思うのは戦いに慣れた頭が勝手に思ったこと。思わずそれを小さな声で呟いてみたけどすぐに雄叫びに掻き消されてしまった。





「黒ネコじゃないのか!?」


黒ネコ?そんな名前なんかこの世界で聞いたことがない…いや、待って。もしかしたら彼の名前なのかもしれない。彼は黒ネコって名前でこの世界で広まってるんだ。私の舞姫という名と同じように裏の名がこんなに広まるなんて彼はいくつ任務をこなしたんだろうなんてふと考えてみた。





「…ごめんね、棗」


何となく今言わないと後悔してしまいそうな気がして、たくさんの雄叫びの中に紛れ込むように言った。そっと届くかな、どんな形でも届くといいな。さあ、任務は今始まった。







僕等の悲劇は出会った事
(言われなくても分かってる)




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