ユーレカ
□溜まりに溜まった
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俺が着いたとき、すでに敵が歓喜の雄叫びをあげていて、その中の1人が高らかに叫んでいた。舞姫を捕らえたぞ!と。そいつを見るとぐったりとした悠の腕を掴んでいる。頭にカッと血が上って周りは火の海で俺の腕の中に悠がいた。敵が火の海から逃げたのか、俺たちが瞬間移動のアリスストーンで学園の病院へ移動したのか定かではない。気がつくと手術中のランプが赤く光っていた。
「悠は!?」
どこで聞きつけたのか、すごい剣幕で高瀬が病院へ瞬間移動してきた。俺が何も言わずにいると、彼女は手術中と書いてある赤いランプをジッと見つめた。
「あんたは悠を助け出したんでしょ?」
この状況で助け出したなんて言えるわけがない。それは赤いランプを見つめながらグッと握りこぶしをしているこいつも一緒なわけで。それでも俺に、一緒に祈ろうと言うこいつは悠と同じくらい強いと思う。
少しして赤いランプがフッと消えて医者らしき人が出てきた。そこには高等部の奴も一緒にいる。高瀬が今井代表!と駆け寄った。
「悠の容体は?」
「命に別状はない」
よかった、と安心したように高瀬がその場にしゃがみこんだ。しかし俺も高瀬も気がついたんだ、命に別状はないだけの顔じゃないことに。案の定、ただ…と切り出された。
「精神的ショックによるものか、まだ意識が戻らない」
あとは雨宮次第だと続けた。嫌でも目を覚まさなかったらと考えてゾッとする。俺がもっと早く助けられていたら、そもそも任務なんかさせていなかったら…。
「…大丈夫」
俯き掛けていた俺に高瀬が言った。目に涙を溜めて自分にも言い聞かせるかのように強く。きっと悠は高瀬のこういうところを信じて救われてきたんだと思う。俺にとって一生敵わない相手。大丈夫だ、その言葉を信じよう。
溜まりに溜まった
(涙をこぼさないように)
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